【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ43)

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第133話　改造人間ページ43

「…多いな」

トンネル内にいた低級呪霊たちは、足で踏むだけでぐしゃ、と音を立てて潰れる。

どうもおかしかった。
こんな呪霊が数いようとあの事故を起こせるわけがない。

せいぜい二級、いや、一級かそこらじゃなければ。

道が封鎖されて車が来なくなったから、勝手にどこかへ行った？

「いや」

呪霊はそんな簡単なものじゃない。

おびき寄せるか、と左腕に手をかけたとき、背後から変な気配を感じた。

咄嗟に振り向いて正体を確認する。

「呪霊、じゃないな」

見た目も呪力も呪霊に近いが、首から下げられたネクタイが“そう”じゃないと物語っている。

「真人…？」

俺はそれを見たことがある。
いつかけーくんが対峙した呪霊が腕時計を着けていたそうだ。

真人の術式で作られた“改造人間”。
それは人間だったもの。

等級は行って準一級。
一人一人は弱くても、数が多すぎる。

改造人間が文字通り肉の壁となり、いつの間にかトンネルの両側を塞がれていた。

手始めに、一番乗りで襲いかかってきた改造人間を殴る。

「こりゃ、酷いな」

触れたときに一瞬感じる人の体温。

今まで呪詛師と何度も戦って、葬ってきた。

でもこれらは、もともとは罪の無い一般人…真人のことだから、わざわざ呪詛師を使うとかそんなことはしないだろう。

次々向かってくる改造人間を殴る蹴る。
たまに術式も使いながら、まるで殺戮だ。

「ふぅ」

血で汚れる顔を拭いながら、最後の改造人間を根で貫き葬った。

時間にして一分。
トンネルに蔓延る改造人間およそ百五十体がようやく消えた。

トンネル内に再び光が差し込んだ。

「やるね」

「…真人」

パチパチと手を鳴らしながら外から歩いてきた真人。

「何がしたかった。
ここの事故起こしてたのも真人？」

術式を発動するための構えを取りつつ、尋ねる。

「正解。夏油に頼まれたんだよ」

真人は改造人間の“ストック”を手に持って、少しずつ近付いてくる。

「何を？」

大方一般人に手を出して、呪術師を呼び出すことが目的か。

そんなことをして一体なにがあるのか。

「…ッ」

「こういうこと、だよ。三那人」

再び現れる数百体の改造人間。

「だから、なにがしたいんだよ！！」

今さら増えたところで、同じ事をもう一度やるだけの話。

(コイツらをなんとかしないと、真人にたどり着けない)

呪霊じゃない者を相手にして、少しだけ辟易していた。