【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ36)

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第127話　京都校ページ36

華御家にはおおよそ当主と名乗れるほどの人間は存在しない。

如何せん俺というイレギュラーが産まれてしまったものだから。

そういう話で言うと俺が当主ということになるんだろうか。

華御には分家も多い。
それでも相伝を使いこなせるのは、幾多の華御の人間の中で俺一人だ。

特異体質の天与呪縛がうまいことハマった感じ。

御三家当主だけの集まりに、俺が産まれてからは華御家も呼ばれるようになった。

しかし代表として出ていくのは親でもなく祖父母でもなく、俺だった。

そのときに直毘人とも言葉を交わした。

クソを練り固めたような禪院家だが、あの人はなんとなく違う感じがする。決して好きではないが。

「となると直哉とは仲良くしといたほうがいいかな。少なくともあっちはそのつもりみたいだし、大丈夫か…」

「なにぶつくさ言ってんのよ」

「あ」

考えごとをしながら歩いていたら、いつの間にか京都校に着いていたらしい。

「歌姫、もしかして待っててくれた？」

「違うわよ。西宮と三輪が任務に行くのを見送ってたら、偶然アンタが来たの」

「あれ、じゃあ二人には会えないのか」

わざとらしくがっくりと肩を落とす。

全員に会えるとは思っちゃいなかった。
みんな呪術師だから、任務がいつ入るかなんて分からない。

「メカ丸もいないわよ」

「メカ丸はさっき会ったよ」

「あらそう？」

歌姫は、じゃあとりあえず着いてきて、と舗装された道を先導する。

初めてじゃないから案内は必要ないのだが、それを伝えると振り向いて眉を寄せる。

「一応客って立場なんだから、もてなしくらいするわよ」

「ふーん、ちゃんとしてる」

そんなこんなでしばらく歩き、客室ではないが空き部屋に通される。

なにか食べるか聞かれたが、さっき食べてきたことを伝えて断った。

一応手土産があるので、と動こうとしたが、みんな呼んでくるからと止められた。

(楽巌寺学長…悟と歌姫交換してくれないかな)

ソファに座ってスマホをいじっていると、扉が開く。

「こないだ会ったばかりじゃない。なんで来たのよ」

「せっかくいらしてくれたのに失礼だろう」

「よう華御(ブラザー)。任務は大丈夫だったか？」

辛辣な真依、誠実な憲紀、そんな二人を気にも留めない葵。

「こんにちは。任務は一波乱あったけど無事」

とりあえず座って、と向かいのソファを指した。