【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ35)

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第126話　禪院④ ページ35

立ち止まっていては通行人の邪魔になってしまうので、植木の石段に腰掛けてかくかくしかじかとこうなった経緯を話した。

「…というわけなんだが」

禪院直哉は騙されていたことにキレるかと思っていたが、これまた予想に反した行動を取った。

「なら早よぉ言ってや。どーりで間延びした変な喋り方やと思ったわ。

あぁそれと、婚約の話は白紙やで」

「当たり前だろ」

さっきから意外な言動を見せる禪院直哉。
なかなか掴めない男だ。

あと喋り方露骨で若干バレてたらしい。

「口利きなんて面倒なことせんでもよぉなった。な、三那人君。なかよう(・・・・)しような」

女だったときと比べて多少柔らかくなったが、それでも尚、自分のほうが上だと思っている辺り面白い。

「“オトモダチ”になるのは良いけど、言っておくが俺は御三家や華御家のしがらみに囚われるような男じゃないよ」

「態度悪いなぁ。俺、禪院家の次期当主なんやけど」

「話聞いてたかな」

あくまで薄ら笑いを貼り付けたまま、余裕を崩さない。

「君も悟とは違うタイプの残念イケメンか」

でも禪院直哉自身は悟が嫌いなタイプの呪術師だ。

「クソを下水で煮込んだみたいな性格」

「三那人君のボキャブラリーはなんなん。しばいたろか」

「勘弁して」

禪院直哉は特別一級術師だそうだ。
禪院家は特別一級術師が多かった気がする。

特別というのは「高専に登録していない」術師につくもので、登録していれば普通の一級術師となる。らしい。

だからつまり禪院直哉は俺と同じ等級なわけだ。

「禪院直哉は強いの？」

「なんでフルネーム呼びやねん」

「直哉クン」

禪院と事を構えるのは誉められたことではないが、扱いやすい男だ。

ちらっとスマホを見ると、ちょうど昼前。
歌姫には正確な時間までは伝えてないから、昼ごろならいつでもいいとは思うが。

「悪いけど、これから本当に用事あるから」

植木から立ち上がって、ズボンに少しついた砂を払う。

「ほなな。次任務かなんかで一緒することになればよろしゅう頼むで」

直哉はそんな俺を、今度は止めること無く見送った。

「そもそも次期当主って本当か…？
だとしたら直哉…直毘人の息子？」

禪院家現当主の禪院直毘人(なおびと)。
もう七十になる…彼とは多少なり話したことがあった。