第120話 思わぬ事態 ページ29
「…拠点というのは…」
「普通の人間とは訳が違ウ。呪霊をナンパするような奴に引かれたくはないガ、平たく言えばここに“住んでいル”」
心外だ。
声の掛け方は人によるだろう。
「あぁそれト、言い忘れたガ…」
メカ丸がそう言った途端、体に違和感を感じて首を傾げる。
「この辺りの呪霊の血を浴びるト」
「…あれ、なん…だ?」
今度は明確になにかが変化する感覚があり、気持ち悪くて蹲った。
「体になにかしらの異常が起きル」
「…あのな……そういうことは最初に言うべきだ」
「原因の対処中ダ」
その“なにかしらの異常”が収まるのを感じ、なにが起きたのかよく分かっていないまま立ち上がる。
「…あぁ、そうきたカ」
「は?」
メカ丸が俺を見て気まずそうにする。
ということは自身がおかしなことになっているのかと、とりあえず目線を下げた。
「…お?」
マズいことになっていた。
「初めて見る変化ダ。俺の体では物理的な変化が起きなイ」
「…これ…な、なんでだよ」
体が女性のものになっていた。
後天的女体化とも言う。
胸が若干膨らみ、体つきも少し丸みを帯びているが、身長は変わっていないためイケメン女子と言える。(自分で言うが)
「これ、戻るのか?」
メカ丸の表情は変わらないが、声色的に少し対応に困っているようだ。
そりゃあ目の前の男が突然女になったら無理はない。
「最大でも丸二日ダ。それ以外で異常が無いなら大丈夫だロ」
「大丈夫なわけあるか」
丸二日も女の体で過ごさなきゃいけなくなる。
長いため息を吐いて頭を抱えた。
「でもまあ…死ななかっただけマシか…」
(こんなところであっさり殉職だけは勘弁願いたい)
ところで、少し前から感じていた気配。
「あー、あの倉庫。いるよね」
メカ丸に背を向けるように振り向いた。
人一人分の気配、知っている呪力。
「…気付かれるカ。出来ることならこのまま帰ってほしいガ」
「やっぱりそうか」
あそこにはおそらく、メカ丸の本体がいる。
本体…このロボットの体を操っている“人間”のメカ丸が。
俺がその倉庫の方へ歩いていくのを、メカ丸は後ろから黙って見ていた。
「止めないんだ」
「止まらないだロ」
前に立つ。
「本当にいいんだね?」
「………好きにしろ」
向こうからくぐもっていない、人間の声が聞こえた。
大きな両開きの扉に手を掛ける。
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ゅ ぅ ゅ 。(プロフ) - おいおい、花御可愛すぎんか❥・•??? (8月21日 9時) (レス) @page21 id: 306f53c7de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2021年5月29日 23時