【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ3)

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第95話　握手会③ ページ3

※アイドルの知識が無い者が書きます。ご了承下さい。

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ビルに囲まれる東京の街並み。
酔いそうな人混みの中、今はバス停で仲良くバスを待っていた。

個握というのは個別握手会のことで、身分証が必要なので誰かにあげるということは出来ない。

個握だか全握だかライブがうんぬんとか葵が語っているのを適当に聞き、ビルの屋上に佇んでいる呪霊を眺める。

「ぷにぷにしてそう…陀艮とどっちが触り心地いいかなぁ…あれは翼？空飛べるのかな？でもエラっぽいのもついてるな…じゃあ魚？」

「ボソボソなに言ってんのよ。気持ち悪い」

声に出ていたことに気付かず真依に引かれ、仕方なく呪霊から目を離した。

わざわざ祓いには行かない。
害の無さそうな呪霊、蠅頭はいちいち祓ってもきりがないのだ。

「お、来た」

目的のバスが来て、上がって整理券を取る。

「満員…さいっあく」

席は空いておらず、全員立って乗ることになった。

みんな揃って体幹が良いのでバランスを崩すことはない。こういうときは呪術師に限らず鍛えていると便利だ。

不本意ながら真依と密着してしまって気まずい。

(これは訴えられたら負ける気がする)

しばらくそんな状態でバスに揺られて数分。
乗客の大半が降りていくバス停で葵が降り、俺達も降りる。

乗客の目的は同じらしい。

人の波に従って葵に着いていく。

「なんであんたも良い匂いなのよ、ムカつく」

「え？」

少し前を歩く真依が何か言ったが聞き取れなかった。かといって二度も言う気はなさそうだ。

俺は後ろの悠仁がはぐれないように、腕を引いて横を歩かせる。

「そういうの女の子にしたらモテるよ」

「はは、いらないかな」

生まれてこのかた恋人を作ったことがないから、そんなことを言われてもという感じ。

ちなみに杉沢第三高校にいた短い期間で三回ほど想いを伝えられた。

俺は年齢的にも立場的にもあれなので丁重に断ったが、一応モテてはいるのだ。

「ここだ」

葵が立ち止まったそこに次々入っていく男性と、中には案内所的なソレと長蛇の列。

女性は数名しかおらず真依が浮いているが、本人は気にする様子も無い。

中に入ってすぐ悠仁が物珍しそうにキョロキョロし出すが、葵に引っ張られて列の最後尾に並んだ。