【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ20)

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第111話　愛別離苦④ ページ20

何はともあれ折角あるのならと俺も座った。

「やっぱ寝てたな」

傑はいつも細目だから遠目だと判断できなかったが、近付くと寝息が聞こえる。

「ねぇ花御、漏瑚、この人結局なんなの？」

既に座っていた二人に、傑を指差して聞く。

しかし二人が何か言うより先に、傑がその指をパシッと掴んだ。

「人を指差してはいけないよ」

「げ」

傑が目を覚ましてしまった。
もしかしたら近付いた時点で起きていたのかもしれない。

「私は夏油傑だよ。言ったじゃないか」

「違う違う、そういう話じゃなくて」

俺は座ったまま、笑う傑を横目に見る。

そもそも“夏油傑”は去年死んだ筈だ。

出会ったときは考えるのが面倒で流したが、改めて考えるとやはりおかしい。

傑と同じ呪霊操術の悟の同期、「すぐる」のことも気になる。

「だとしたら、なんだ？夏油傑は実は生きてたってことでいいの？」

「さぁ、どうだろうね」

「チッ」

教えてくれる気は無いらしく、起きあがって海の方に歩いて行ってしまった。

どちらにしろ、花御と漏瑚も傑については何も知らないのだろう。目的が一致した故の協力関係だ。

「なんだかな……大きいこと考えてる気がするんだ」

悟の封印より奥に、もっと何か潜んでそうな、そんな感じ。

“悟の封印”が最終目標なわけもないだろう。

『貴方は何故私達を祓おうとしないのですか？』

花御が海を眺めてそう言う。

(祓おうとしないというか…)

「祓えない」

「今更何を言うのだ。貴様は領域も展開して見せたではないか」

「違う違う」

あの任務で初の領域展開を成功させたわけだが、一人ずつなら祓えるだとか驕るつもりはない。

やってみなければ分からないが。

「そうじゃなくて……」

はぁ～と長い息を吐いてうつ伏せになる。

「さっさと言わんか」

「いや、漏瑚。さっきの“呪いの時代”がうんぬんとかもそうなんだけど…」

うつ伏せのままボソボソと呟くように言う。

「俺は別に呪いの世界を求めてるわけじゃなくて…君達に生きててほしいわけで…

恥ずかしいなこれ、なに言わされてるんだろう」

『…つまり？』

「…つまり、漏瑚も花御も真人も陀艮も…好きなの。俺は君達が好きなんだよ」

愛の告白みたいになってしまって、今更なのに恥ずかしい。

「急に気色の悪いことを言うでないわ！！」

キレられた。