【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ19)

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第110話　愛別離苦③ ページ19

『…いつまでやっているのですか、あなたたちは…』

花御が言うのも無理はなく、俺達はかれこれ二十分くらいずっと動いていない。

「今まで出来なかった分を補充してる」

漏瑚もなにも言わないし、じゃあいいだろうということで好きなだけ抱えている。

真人は一通り写真を撮るとすぐに飽きてまたどこかへ出て行った。

傑はやることもないのかビーチチェアにもたれて目を瞑っている。

しばらく前から漏瑚が微動だにしない。

『漏瑚。…漏瑚？』

俺の腕の中の漏瑚の顔を覗き見る花御。

「どうした？」

『寝ていますね』

「…え、ほんと？」

寝息もないため気付かなかったが、何故か抱かれたまま眠りに落ちてしまったらしい。

俺も顔を覗くと、漏瑚の大きな眼が確かに閉じられている。

「呪霊も寝るんだな」

『人間の基準に当てはめないで下さい』

「はいはい…」

(俺は人間なんだけどな…)

花御は漏瑚の寝顔が珍しいのか、素直に抱っこされる漏瑚が珍しいのか、しゃがんで眺めている。

表情が分からない、どんな感情なのか。

「あ、花」

目の木から一輪の小さい花が咲いた。

「なにそれ、感情表現？」

と言って俺も頭の天辺に花を咲かせてみる。ピ○ミン。

『…違います』

若干恥ずかしそうにしているので、それで正解だろう。

「だから呪霊(きみたち)にさぁ……そういうとこ見せられると、別れ時辛くなるからやめてくれよ！」

右手で漏瑚を抱えたまま左手で頭を掻く。

逆に俺が死にそうなとき、この人達のことを思い出してしまったのだが。

「なにが辛い。そのときは儂らの同胞達が呪いの時代を作る」

「うわ」

俺の大きな声で起きてしまったようだ。

いい加減離せと振り払われ、立ち上がった漏瑚はそのままビーチチェアのほうにスタスタ歩いて行ってしまった。

花御が差し出す手を取って俺も立ち上がった。

「起こしちゃったかぁ」

ズボンに付いた砂を払って漏瑚を追いかけた。

「…ん？あれ？」

さっきまで傑が座ってるので全部だったチェアが、漏瑚と花御、それから俺の分まで増えていた。

「まばたきの一瞬で…」