【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ11)

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第103話　雨降って地固まる⑤ ページ11

「疲れた」

円を解かずにスマホを開く。
今の時刻は、十一時半。

「出ない」

気が遠くなるほど長い時間警戒していたが、呪霊の気配は微塵も感じない。

夜中とはいえ多少なり人の往来はあれど、怪しい動きをしている村人もいない。

「“あれ”見ちゃったからには、嘘つかまされた訳でもないしなあ」

村長の遺体。
あれは確かに呪霊によるものだった。

三日置きの犯行、三日前の被害者は双子の片割れ…ではあの男性はいつ頃やられたのか。

聞けなかったが、まあ調査とは関係ない。

「残穢でなんの呪いか、とか。
そういうの分かる術師がいないものか」

なんてぼやく。

森の中は既に暗闇に包まれている。
偶然にも見事な満月が夜空に輝いているが、木々に阻まれてそんなに明るくはない。

自分より索敵に特化した術師がいたら…と。

「あーだめだ。人任せにしようとしてる。悪い癖」

気持ちを切り替えるため、円に意識を集中させた。

それからたった五分後のこと。

「…！！来た」

木偶人形のうち一つが破壊されるのを感じた。

場所は、

「一番遠い」

村を挟んでちょうど反対側、三ヶ所のうち一番遠いところだった。

呪術師の存在に気付いたのかもしれない。
呪霊が急いで犯行に及ぶ可能性がある以上、走っても間に合わないかもしれない。

そう思い、残り二つの木偶人形を現場に向かわせる。足止め程度にはなるだろう。

村人の目に気を付けながら、根を顕現させて上空をスケボーのように移動する。

数秒で反対側に着き、地面に着地した瞬間、木偶が全て破壊された。

「森の中…人の気配は無し？
呪霊…なんだ、コイツ」

情報では人型、巨躯の男性。

それは人間の男のシルエットで、身長が周りの木くらいあり、体が毛に覆われている。

金色の鋭い眼に睨まれ、その威圧感と呪力量に思わず後ずさる。

「これは…あれ、だな」

狼男。

通常人間の姿をしており、狼の姿に変化する西洋の妖怪。

多くは満月を見るか、狼の皮を被ると変身するとか…そんな風に言われている。

そして、今は

「満月…ッ！！」

振り下ろされた爪を避け、一度逃げに徹する。

気配が特級レベル。
狼男、特級仮想怨霊だ。

そんな情報は一切無かった。

被害状況からも準一級で妥当だと思っていた。

「大丈夫か？特級案件じゃねえのか、これ」