【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ1)

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第93話　握手会ページ1

「これなんてどうですか？」

「これも合いそう…無駄に良いスタイルしてるなぁ」

「無駄………」

現在地、高専の休憩室。

前に座る桃と霞が、俺とファッション雑誌を交互に見ながらコーディネートを考えてくれている。

実際に買いにいかなくても着替えられる便利な術式だが、俺にファッションセンスが皆無なので二人に頼んだのであった。

資料さえあれば自分で作り出せる。

(しかしこの状況が…よろしくない気がするが)

しばらくして、桃が手を叩いた。

「よし。これで決まり」

「できた？」

霞が頷いて、雑誌を見えるように向けてくれる。

「これと、これ。それとこれを合わせてください！」

「おぉ」

提示されてすぐ二人から離れ、人通りがないところで雑誌をよく見ながら編み直した。

全部出来たら二人のところに戻って披露する。

「どう？」

色は全体的に緑っぽい。
季節感もばっちりで、着やすいことこの上なし。

似合っているかは自分では分からないためコーディネーター二人に見てもらう。

「いいんじゃない？」

「ですね！とてもお似合いです！」

考えているときは難しい顔で雑誌を見ていた二人だったが、完成したそれを着た俺を見て少し嬉しそうにしている。

「ありがとう桃、霞。
術式あってもセンスがなきゃしょうがないから困ったもんだね」

スマホのカメラを起動して、鏡代わりに全身を見る。

木製の床だったので術式でスマホを掴んでいる。
こうなればもう第三の手と言っても過言ではない。

「いいな〜その術式。私にくれない？」

「いや無理無理」

術式譲渡なんて出来たら苦労はしない。

「それにこれは天与呪縛あってのものだから。
大変だよ～？なにもしてなくても呪霊が寄ってくるの」

手袋で抑えても全て防げるわけではないので、蠅頭に囲まれる生活は普通の術師なら落ち着かないだろう。

「よく耐えられますね」

「私聞いたことあるんだけど、アンタ呪霊が好きなんだってね」

「えっ！？」

「あはは、そうだよ。どこで聞いたのか知らないけど。そんな顔されると凹むなぁ」

霞は意味が分からないという顔をしているが、なにかを好きになるのに理由がいるだろうか。

「顔だけの男っているよね」

「それ俺のことかな？」

「あ、あの！そろそろ時間じゃないですか？
決めるのに時間がかかってしまったので！」

「あ、ほんとだ」