第55話 反省�� ページ8
「本命の真人に意識のベクトルを向けさせたくない。
ある程度全力を出してもらわないと“帳”のテストにもならないしね。学生を閉じ込めるのが手っ取り早い」
「それ、俺は外にいるけどいいのかなぁ」
煽ってみせるが、傑は特に気にする様子もなく。
「邪魔するの？」
「さぁ…どうかな」
(邪魔はしないけど)
でも絶対に死者は出させないとだけ決心した。
『…宿儺の器以外は殺していいのですね』
「…いいけど、あまりオススメはしない」
「よくないよくない」
誰を殺してもいいわけがない。
また会話に割り込もうとしたが、目の前の真人に無言で見つめられて黙る。特級には敵わない。
「宿儺の動きがさ、少し私のイメージとズレる。これは推測でしかないんだけど、恐らく学生の中に宿儺にとっての地雷がいる」
(地雷…一年の誰か？)
「真人、どいて。泳いでくる」
もたれている真人を退けて陀艮が泳いでいる海の方に行く。
着衣水泳。
海で泳ぐのは久しぶりだった。
ギッシリ編んである服の繊維から水が侵入する。
少し遠くで浮かんでいた陀艮に乗った。
遠くで話している声が少しだけ聞こえる。
(本当に悟が封印されちゃったらどうしよう。俺も特級に勝てるように強くならなければ)
封印されなきゃいい話なのだが。
ここまで緻密な作戦を聞いていると、不安感が募る。
ただ、その緻密な作戦を俺が全て聞いていることだけが救いだ。
つまり俺のことを、作戦を聞かれても問題ない雑魚だと思っていることになるのだが。
「…傑のことだ。俺が知らないところでも作戦を練ってるんだろう」
漏瑚は交流会襲撃は不参加らしい。
花御の活躍の場だ。
術師としては報告しないといけないはずだが、せっかく呪霊と親しくなれたんだからまだ躊躇する。
もし平和的に解決したとして、その
「…なら、呪霊にとっては」
自分が心底気持ち悪かった。
人間としての生き方か、呪霊との友情か、どちらも取ることが出来るのか。
気が付いたら、漏瑚と傑がいなくなっていた。
陀艮から離れ、陸に泳いでいく。
服を一度全部ほどいて編み直す。
呪力消費はそんなにないが工程がめんどくさい。
「よっ」
立っていた花御に体当たりをした。
花御は避けずに受け止める。
『なんですか』
「別に…」
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
