第89話 仲良し�� ページ43
「まぁ最初は少し素直じゃなかったよね」
「君はあの脅しがそういう認識だったの？」
一番端のビーチチェアの俺から、花御、真人、傑の順に座っている。
「今殺されてないあたりさ…」
「襲っても君また逃げるだろ」
花弁の目眩ましによって逃げることは容易だった。
あわよくばこのまま平和的に仲良くしていたいと思うが、既に悟襲撃、交流会襲撃と二度も事件を起こしている時点で“平和”とは程遠い。
と、いうよりファミレス事件の時点で有罪である。
「呪霊には花粉の効き目薄いみたいだしな」
「花粉？」
「うーん。術式」
もともと呪霊に効いている様子はなかった。
ただその呪霊に知能がなかっただけかもしれないが。
どうせ効かないなら言ってもいいかと思い、切り出す。
「俺を疑わないように…自然に俺を信じるようになるっていう、まぁ催眠みたいな感じかな」
『貴方から微かに感じる香りはそれでしたか』
「あ、分かる？」
同じ術式だからか、もともと鋭いのかは分からないが、花御は俺が発している香りに気付いていたらしい。
たとえ呪術師の誰かに気付かれようとも、植物の術式だからで誤魔化せるが。
「花御はそれ出来ないの？」
真人が聞いた。
花御が同じことをすれば、人間に簡単に近付けるんじゃないかと思ったのだろう。
『無理ですね』
「うん。これは俺が創った…独自の植物だから俺以外には使えない」
使い方を教えるだとかそんな簡単なことではない。
実は華御家の倉庫に封印されていた書物を参考にしたのだが、それは置いておく。
それから真人もどこかへ行ってしまい、暇を持て余す。
時間を見ようとスマホを開くと、ナイスタイミングでかかってくる電話。
「悠仁だ」
もうここでいいやと思って、ビーチチェアに座ったまま応答ボタンを押す。
≪あ、三那人！≫
電話越しの悠仁の声と、バックから聞こえる葵と真依の声。
どういう組み合わせだろう。
「どうかした？」
≪いや東堂がさ、なんかアイドルのチケットがなんとかって≫
「は？」
悠仁がそこまで言ったら電話の向こうがちょっと騒がしくなり、相手が変わった。
≪
「華御と書いてブラザーと読むんじゃない」
葵だった。
今度は悠仁と真依がバックで話している。
「で、なんの用？」
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
