第87話 仲良し ページ41
「もう良さそう？」
花御に呪力供給をし続けて早一時間。
花御は、傷は治りきってはいないものの呪力は十分に戻っていた。人間の呪力が馴染むのかという疑問は解決だろう。
立ち上がって離れる。
『助かりました』
「死なないくせに」
(さて、今日と明日は特に予定がないわけだけど、どうしようかな〜)
伸びをすると、腰がパキパキと音を立てる。変な姿勢でじっとしていたせいだ。
「日差しが強いな」
夏でもないのに暑い。
「一緒に映画見に行かない？」
「やだよ。トラウマ」
順平の一件以来、もう真人とは絶対に映画を見に行かないと決めた。
そのおかげで順平と出会えたのだが、それとこれとは別だろう。
「陀艮ー！」
海の方へと走って、浮かぶ陀艮に向かってダイブ。
木の繊維でできた服に冷たい水が染み込む。
「ぶふぅー」
「あ、発声出来るんだ」
飛び込んだ俺を大きな手で受け止めてくれた陀艮は、発声＿呪胎、低級呪霊と似たような歪んだ声を発した。
陀艮の浮かぶ背中？に乗り上げ、うつ伏せで寝転がる。
「陀艮、俺が言ってること分かる？
ていうか、俺のこと分かる？」
そもそも俺のことを認識しているのか否か。
陀艮は呪胎ゆえ、人間で言う赤ん坊みたいなものだ。
まあ、一応仲間だと認識しているから受け止めたのだが。
「ぶぅー」
「可愛いなぁ…」
見た目の面でも他の呪霊より可愛い陀艮は、俺の中で癒し系呪霊の枠に収まった。
「三那人〜！！！」
俺達がいる近くにザパーンと勢いよく飛び込んできたのは真人。
そのせいで水しぶきが全部かかり、陀艮が傾いたので俺は水に落ちてしまった。
「ぶはっ……やめてよ真人」
水から顔を出して陀艮に掴まる俺を見て、仰向けに浮かんだ真人は笑った。
「何笑ってるんだよ」
「いやー…面白い人間もいるんだね」
「は？」
順平の話でも始まったのかと思ったが、予想とは反する。
「呪詛師でもなくて普通の呪術師なのに、ここにいるのっておかしくない？」
「…俺？」
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
