第52話 山奥の温泉�� ページ5
「そういえばだいぶ治ってるね」
肩近くまで切り落としていた腕は、もう手首ほどまで生えてきていた。
「もう痛みもない」
「呪霊みたいだねー」
手袋は変形したときに破けてしまったので紫の皮膚が剥き出しだ。
服は編み直せるが、手袋はまた発注しなければ。
「やったときに思ったけど、それ本物の腕なんだ？」
「天与呪縛だけど、言ってなかったっけ」
「聞いてなーい！キモいね」
(ひどいな)
俺も常々思っていることではあるが。
とはいえこれのおかげで呪力量アップしてるわけで、ありがたいっちゃありがたかった。
手袋無しだと普通の呪術師が数分で死ぬくらいの呪力が常に流れ出しているが、呪力量アップしてるのであまり関係ない。
手袋してれば低級呪霊が集まるだけで済むので実質天与呪縛なんてあって無いようなものだ。
近くにいた真人がまた飛び込んだせいで、俺も水浸しになった。
「あーあ…」
「真人、オマエも随分と消耗しているな」
座っている漏瑚が、楽しそうに泳いでいる真人を見た。
「あバレたー？
宿儺と器、アイツら天敵でさあ」
同じくびしょぬれの漏瑚を見た。
しかし漏瑚は術式の関係なのかは分からないが、既にあまり濡れていなかった。
仕方なく全身編み直す。
「たまたま手に入った
真人は人差し指を立てている。
おもちゃは順平のことだろう。
「やっぱり人質とってハッキリ“縛り”作らせるべきじゃなかった？」
「いや、縛りはあくまで自分が自分に科すものだ。他者の介入や他者間との縛りは簡単ではないよ」
「えー？俺ちゃんと利用されてるじゃん。腹立つなあ」
縛りを作らせるために犠牲になった俺の左腕。
失敗してちゃ世話ないが。
「順平にやろうとしたら君が邪魔したんだろ」
「そんな、助けるに決まってるだろ？」
真人が温泉から上がる。
呪霊には
そもそも必要ないといえばそうなのだが。
とはいえ俺のように
「漏瑚。宿儺に触れて分かったけど、とりあえず夏油のプランを軸に進めていいと思う。宿儺にはそれだけの価値がある」
「指を全て集め、宿儺に献上する……か」
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
