第85話 呪力 ページ39
「葵と三那人の話だと植物に潜り込めたらしいし、天元様の結界も植物には機能しないでしょ」
森から生まれた精霊じゃなくて花御が森そのものということだろうか。
「同じことできる三那人にも機能しなかったりして」
「俺は人間だし」
「とりあえず今は学生の無事を喜びましょう」
特級相手に死者０。
本当に素晴らしいことだ。
一番重傷だった俺だが、結果オーライだと思っている。
「だが交流会は言わずもがな中止ですね」
そう夜蛾学長が言ったことに対して、悟がため息を吐いた。
「それは僕たちが決めることじゃないでしょ」
みんな頭にハテナを浮かべるが、悟の言いたいことが俺には分かった。
「俺達の判断で青春を取り上げるのは憚られる」
「三那人は分かってるみたいだねぇ」
とどのつまり当人である学生達の意見を尊重しようぜという話だ。
会議はひとまずそこで区切りがついた。
悟は学生に話を、俺は少し用事があると言って抜けた。
明日はお休みとなるので、任務もなし、完全に自由である。
俺は学生のことより、“あっち”が気になってしょうがなかった。
＿＿＿＿＿＿
「というわけでやって来た」
「いらっしゃ〜い！」
花御と真人の微かな残穢を辿り、例の領域。
広い空、広い海、入ったことはないがおそらく広い森。
海に浮かぶ陀艮と、俺を睨む漏瑚、傑は不在で真人は歓迎モード。
そして…
「大丈夫？」
体が半分くらい欠けててなんかいろいろ出ている花御が砂浜に横たわっていた。
横にしゃがんで触れてみる。
漏瑚は頭だけになっちゃってキュートだったが、これはさすがに酷い。
「大丈夫でしょ、呪霊だし」
真人はしゃがんで木の枝で花御をツンツンしている。オーバーキルである。
「呪力カラカラ。しばらく治らないね。でもあのダメージで悟のムラサキ？食らって生きてるのはすごいな」
「花御は超タフなんだよね」
(だろうな)
タフだし硬いし。
『…っ』
「おっ、何？どうしたの？」
意識が無いと思っていた花御が、残ってる右腕で俺の足首を掴んだ。
その瞬間体の力が抜ける感覚に頭がグラついた。
「えーっと…………」
おそらく呪力を吸いとられている。
無尽蔵呪力製造人間なので問題ないのだが、気持ち的には複雑だった。
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
