第84話 完遂�� ページ38
「続いて人的被害です」
この場にいるのは潔高と悟、歌姫、冥さん、学長二人と俺。
今は襲撃による被害状況を確認している。
「高専に待機していた術師で五条さんや夜蛾学長と別行動だった方達の中で、二級術師三名、補助監督五名が重傷を負いました。
庵さんと華御さん、遭遇した術師数名の尽力により死者は出ていません。
家入さんからの報告待ちですが、庵さんからの情報を鑑みるに以前七海さんが遭遇した呪霊の仕業で間違いないかと」
悟が舌打ちして俺を見る。
「あの人形が見た情報はオマエに還元されないの？」
「無理、分身じゃないんだから。というか人間の形した木だから視界すら無い」
芽のときに術式解除しても消えなかったのは、木偶として生まれた時点で俺とは別の個体だから。
悟は俺の言葉を聞いてまた舌打ちする。
「この件って学生や他の術師と共有した方がいいですかね」
歌姫の言葉に学長二人が答える。
「…いや」
「上で留めておいてもらった方がいいだろう。呪詛師界隈に特級呪物流出の確信を与えたくない」
今回奪われた呪物は宿儺の指六本、“呪胎九相図”の一から三番。
死人が出なかったこととは全く別問題であり、結構な大問題だ。
「捕らえた呪詛師は何か吐いたか？」
「口が堅いわけではないのですが、まともじゃない要領を得ない発言が多いです」
傑にさえ捨て置いて良いよとを言われていたあの呪詛師。
潔高によると、自分は命令されてやっただとか白髪オカッパのガキがなんちゃらとか。
「性別不詳のオカッパ坊主のガキんちょ、心当たりは？」
「なーし。適当こいてるだけじゃない？自白に強い術師いないの？」
白髪オカッパ、中性的。
呪霊の陣営を割と行き来している俺も見たことがなかった。
本当に適当こいてる可能性はあるが、わざと俺に隠してるということもある。
まず俺は呪霊呪詛師の味方ではないから。
「そもそもなんで呪霊や部外者が天元様の結界抜けられたのよ」
「それは生徒達と三那人が相手にした特級呪霊のせいだと思う」
花御。
「特殊な気配を持ってる。
呪霊は呪霊でも限りなく精霊に近いんじゃないかな」
木の精霊。
(少し性質が違うだけで結界を素通り出来てちゃ世話ないなぁ)
実際のところ、どんな理由があるのか定かではない。
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
