【嗜好・興味：呪霊】.2 (ページ32)

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第78話　黒閃③ ページ32

そんな二人を見た花御は、左半身を包んでいた布に手を掛けた。

そのまま引っ張られ、布はブチブチと音を立てて破れていく。

『どうやら貴方達には、多少本気を出した方がよさそうだ』

花御の左腕が露わになった。

(すげーことになってる)

俺も初めて見る左腕。
全体的に黒く、右腕の反転色。

それから、左肩に赤い薔薇の蕾のようなものが付いていた。

チャームポイントだろうか。
可愛いを狙っているのだろうか。

(可愛いです)

腕だけにしてはボリュームあると思っていたが、あんなにキュートなお花が隠れていたなんて。

「わっ…とと」

驚きすぎて花御を見つめたまま固まっていたら、上空に向かって大きな根が伸びた。

俺がいた位置はギリギリ無事だったが、悠仁と葵はそれに巻き込まれて上空に行ってしまった。

完全に取り残された。
間接的な戦力外通告。

三人は上で戦っている。

「呪力を使うと、これ(根)が成長するのよね」

もう二度とやりたくなかったのに。
なんて愚痴を吐きながら、近くの鋭めな石を手に取った。

真人のときとは違い、今回は腕の付け根に芽が植え込まれている。

かなり深く根がはっているようなので、腕だけ切り落としても取り除けない。

パーカーのフードを噛み、左腕の呪われた箇所ギリギリを攻めて石をあてがう。

「……ふッッ…う」

絶対に慣れない痛みに歯を食いしばる。
口の端から涎が垂れてくるが、気にすることもできない。

花御の芽と共に、いとも簡単に切り落とされた。

「クソッ…痛ぇ…」

普通に使えるようになった術式で傷口から直接木を生やす。

当然意識が飛びそうな痛みが走るが、止血は出来るし木が腕になる。

「…ふぅ」

晴れて自由の身。
処置が終わってすぐ、上に向かって生えていた根が消えた。

先程の根は顕現させて操っていたようだ。
最初から最後まで俺と同じ術式。

上を向くと、上空で毬に乗って飛んでいる花御と、落ちていく葵と悠仁を視界に捉えた。

花御もすぐに二人を追って落下していくので、俺は落下地点へと急ぐ。