第76話 黒閃 ページ30
「次死んだら殺す！！」
恵はそう言い残して、真希と共にパンダに運ばれていった。
「三那人は大丈夫なの？」
「なんとか」
(この二人はいつの間に親友になったんだよ。戦ってる間に何があった)
葵が川から上がる。
「俺は手を出さんぞ。
虎杖、オマエが“黒閃”をキメるまでな！！」
(黒閃……)
手出しを禁じられた俺は、とりあえず体に負担がかからないように木にもたれて座る。
(特級を修行相手にするなよな)
「“黒閃”をキメられずオマエがどんな目に遭おうと、俺はオマエを見殺しにする！！」
「押忍！！」
(いや、)
「待て、そのときは俺が入るよ」
「それは好きにしろ」
こんなところで友達を失ってたまるか、と。
悠仁は花御に向かって歩を進めるが、先程から花御はずっと黙っている。
初めて相対する宿儺の器と葵を警戒していた。
『さて…どう来る？』
花御は指から木を出して悠仁の様子を伺っている。
「オマエ、話せるのか。
一つ聞きたいことがある」
花御の声を聞いた悠仁は、少し距離があるところで足を止めた。
俺は悠仁が聞きたいことを察する。
「オマエの仲間に、ツギハギ面の人型呪霊はいるか？」
言わずもがな真人のことだ。
真人を思い出してか、悠仁は怒りを抑えている。
あの一件で相当恨んでいるらしい。それもそうか。
そして悠仁の言う通り、真人と仲間である花御は
『…いる、と言ったら？』
誤魔化すこともなく肯定した。
その瞬間悠仁は水面を叩き目眩まし、石を投げて牽制してから一気に距離を詰めて蹴りを入れた。
「へぇ、やるな悠仁」
ちゃんと成長している。
『威力はお粗末だ』
悠仁の蹴りをモロに食らった花御だが、少しも効いている様子はない。でもあの蹴りは本気ではない。つまりブラフだ。
花御のガラ空きの胴体に拳を入れようとする悠仁。
だがその直前で瞳が揺らいだのが見えた。
黒閃は出せず、更には避けられる。
悠仁はカウンターから逃げてこちらまで後退した。
葵が悠仁にビンタして説教をし始めたので、俺は木を経由してそっと花御の近くに行く。
本当は俺が教える立場なのだが。
学生とはいえ葵も同じ一級。
実力はトントン、頭脳は葵のほうが上である。
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
