第75話 呪具�� ページ29
動けない俺と恵の代わりに真希が一人で立ち向かう。
游雲の攻撃はさっきちゃんと効いていたから、ヒットすれば強いのだが。
『二人を庇っていますね。先程のキレがない』
「真希！！！」
木に捕まった真希を逃がすため、花御に回し蹴りをする。
真希は離されたが、足に力が入らず俺が捕まってしまった。
首辺りに巻きつく根が肩の傷に当たって痛む。
『パワーが出ていませんよ』
「
花御に植えられた芽のせいで、呪力による身体強化が上手く出来ていない。
芽は痛むものの、切り落とすほうが余程痛いに決まっている。
悠長に覚悟を決めるような時間は無い。
ふと、横目で二人を見た。
真希は、解放されたときに飛ばされたせいで木にぶつかり気を失っている。
恵は印を結んで式神を呼ぼうとしているようだ。
「……はっ」
『何を笑っているのですか？』
円を発動するまでもなく濃い呪力を感じた。
体を拘束されているので、目だけで恵を見る。
「恵、やめろ」
恵は俺の言葉に、握っていた手を緩める。
「選手交代だ」
それと同時に花御と俺の間に落ちてくる二つの影。
水しぶきと共に現れたそれに根が破壊され、俺も解放された。
「いけるか！？
「応！！」
それは葵と悠仁だった。
解放された俺は、葵に横抱きで受け止められた。
「やめろ虎杖！！そいつは俺達でどうこう＿」
言い切れぬままにむせる恵。
進行速度が違うとはいえ俺は肩で、恵は腹。
内臓に直結している分、当然恵の方がダメージは大きい。
葵は俺と真希を一緒に抱き上げたまま、恵の方…否、恵の後ろから来たパンダの方へ行く。
「三人を連れて“帳”を出ろ。西宮曰くこの“帳”は対五条悟用で俺達は問題なく出入りできる」
パンダは気を失ったままの真希を先に受け取る。
俺も預けられそうになったが、その前に自主的に下りて立つ。
「待て！！いくらアンタでも…」
「伏黒」
悠仁は恵を振り返った。
「大丈夫」
恵は悠仁の顔を見て放心、黙り込む。
「気づいたようだな。
羽化を始めた者に
虎杖は今そういう状態だ」
(何人たりともね…それ多分俺もだめかな)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
