第74話 呪具 ページ28
すぐそこの屋根に吹っ飛んだ花御に対して、棘は吐血して倒れた。
俺は憲紀を木の根で寄せ、棘を抱える。
花御は今来た真希と恵が戦っているが、あまりダメージはないように見える。
(よろしくない状況…)
「…華御先生？」
声が聞こえたほうを見上げると、桃が箒から降りてきた。
ちょうどいいと考え、二人を桃の方へ寄せた。
「ごめん桃。俺も戦うから二人を安全なところに運んでくれないか。“帳”は悟以外に効果がないから出来るなら外へ」
「分かった」
せめてものそれで、二人を落とさないように木で固定する。
桃が怪我人二人を乗せて飛んでいくのを見届けて、視線を戻した。
同時に、デカい音と共に花御が吹っ飛ばされた。
真希の特級呪具、游雲だ。
そこに恵の玉犬が追い討ち。
「三那人！！」
合流し、真希と共に走り、俺が蹴って真希が斬る。
追い付いた恵が游雲で花御を攻撃。
真希と恵が武器を入れ替えて花御に向かい、俺は自分の足元に太い根を生やす。
目の木が切断されて少し弱る花御に、無数の木の根で攻撃した。
『…ッッ！！』
今回はちゃんと効いたようだ。
三人は一旦距離を取る。
「っ恵！！」
ようやくダメージを与えられた…と思いきや、恵の腹部に気味の悪い花が生えていた。
真希の方にも攻撃が行くが、そっちは俺が庇う。
「いっ…てぇ」
さっきとほぼ真逆、左肩に根が刺さった。
「三那人！！」
「華御先生！！」
掴んで引き抜き、ちょうど傍に座り込んでいた恵の肩に手を置く。
が、俺も恵と同じ植物を打ち込まれたようで、左肩の鋭い痛みに顔を歪める。
無理に抜こうとすると腕ごと取れそうになる。
『心臓を狙った一突き…素晴らしい反応です。
術師というのは殊の外、情に厚いのですね。
仲間が傷つく度隙が生じる』
「チッ」
恵の玉犬が破壊…否、術式が解けた。
花御に与えた傷も治っていく。
(厳しいな、特級は)
葵やけーくんのように上手く戦えない。
『もう呪術は使わない方がいい。アナタ達に打ち込んだ芽は呪力が大好物。術を使う程
「ご親切に…どうせ殺すつもりだろ」
ズキズキと傷が痛む。
俺は常に術式で花粉を出しているため恵より進行が速い。
発覚してすぐに左腕を切り落とすだけの度胸は、俺には備わっていなかった。
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
