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第73話 殿 ページ27

「棘、これ」

「しゃけ」



建物内。
ノドナオールを棘に渡す。

四人は花御に背を向けて走る。

後ろからまるで水が溢れるように木が迫ってくる。



「来るぞ!!」



木の中から花御の姿を捉え、憲紀が構えた。



「“止まれ”」



棘の呪言が発動し、花御の攻撃が一瞬止まる。それを見逃さず憲紀が攻撃した。



「“百斂(びゃくれん)

穿血(せんけつ)”!!」



合わせた両手から銃弾のように血液が放たれ、花御の頭に当たる。俺でも傷が付かなかった花御が少し欠ける。



「止まるな!!相手は呪霊だ、どうせすぐ治してくる!」



立ち止まった棘と恵の肩を押して走らせる俺は、殿(しんがり)を努める。ここでは一番上の立場だから。


一番いいのは、棘の呪言で動きを止めて他が攻撃する。
それを繰り返し“帳”外へ、もしくは耐久戦で悟を待つ。

だが花御相手に耐久戦は駄目だ。
そもそも棘に限界がくる。



(…クソッ)



後ろから迫る花御を振り返り、木を顕現させてぶつける。



「先行け!!俺が食い止める」

「華御先生!!!」



立ち止まろうとする三人を突き飛ばす。

真っ直ぐ走ればすぐ建物の外に出る。
せめて少しでも時間稼ぎしたいところだ。


恵達が走って行ったのを気配で察し、花御に意識を集中させる。


容赦なく鋭い木で攻撃してくるのを飛んで避け、俺も同じ攻撃をする。

憲紀が入れた傷はもう治っていた。



「止まってくれると嬉しいんだが!」



前に思い切り跳んで花御の頭を殴ろうとしたが、簡単に受け止められる。

捕まれたまま壁に投げられ、背中を打ち付けた。



「かはッ…」



一瞬。
ほんの一瞬、意識が飛んだだけで花御は行ってしまった。



「…っこの!」



急いで恵達のもとへ向かう。




俺が外に出たときには、花御に貫かれる鵺と倒れる棘、殴り飛ばされる憲紀。

俺は吹っ飛んだ憲紀の背後に回り、受け止める。



「生きてるか憲紀!!」



息は荒く、意識がない。

すぐに追い討ちで鋭い木が飛んでくるので、木で盾を作りそれを受けた。



「いっ…」



一本、盾で防げなかった根が俺の右肩を貫通した。傷を押さえてその場に跪く。



「先生!!」



恵が戦おうとする。
棘がそれを止め、前に出た。



「棘…!やめろ!」

「狗巻先輩!!」



それ以上は棘が危ない。
しかし棘は制止を聞かず、花御に近付いていく。



「“ぶっとべ”」



呪言を使った。

第74話 呪具→←第72話 賢者



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作者名:翡翠 | 作成日時:2021年5月14日 22時

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