第70話 襲撃 ページ24
歌姫＋木偶なら真人に勝てはしないものの、人死にを防ぐくらいならできると見込んだ。
木偶がやられても俺が気付くだけで特に悪影響などはなく、ただの便利な分身だ。
歌姫は悟と楽巌寺学長をちらっと見るが、すぐに木偶と一緒に走って行った。
「歌姫より貴様が行った方がよかったのではないか？」
「高専にいる術師と門番、交流会中の生徒、どっちに戦力を寄せるべきだと思う？」
楽巌寺学長は黙る。
「…帳…？」
まだ着いていないのに、会場に帳が降りている。
傑が呪詛師と手を組むだとかなんとか言っていたことを思い出す。
こうなれば俺や学長では間に合わないので、塀の上を走る悟を見た。
「悟！！“帳”が下りきる前にオマエだけ先に行って！！」
「いや無理」
「は？」
悟に断られて“帳”に意識を向けると、なかなかどうして。
視覚効果より術式効果が優先されている。だからあの“帳”は実質もう完成されている。
そして完全に下りきった。
「ま、下りた所で破りゃいい話でしょ」
ようやく“帳”のもとにたどり着き、悟がそれに触れる…が、すぐに弾かれた。
俺もほぼ同時に触れたのだが、どういうわけだか弾かれなかった。
右腕だけ入った状態で、悟を見る。
「器用な奴が来てるな。悟が弾かれて俺は入れるみたいだ」
悟は成程、と笑う。
「三那人、お爺ちゃん、先に行って。
三那人の言う通りこの帳…
“五条悟”の侵入を拒む代わりに、その他“全ての者”が出入り可能な結界だ」
「！！」
そう、それなら足し引きの辻褄は合うのだが、しかし特定の個人のみに作用する結界となると…
「余程腕が立つ呪詛師がいる。しかもこちらの情報をある程度把握してるね」
信じたくないが、これでもう内通者がいることが確定した。
「ほら行った行った。何が目的か知らないけど、一人でも死んだら僕らの負けだ」
絶対に誰も死なせない。
仕方なく、楽巌寺学長と俺は悟を置いて中に入る。
その瞬間感じるあまりにも濃い呪いの気配。
「おいおいおい！！五条悟いねぇじゃん」
正面の階段を降りてきた呪詛師。
俺もはじめましてだ。
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
