第69話 予兆 ページ23
「おっ」
壁に貼ってある札が一枚、赤色に燃えた。
赤だから東京の誰かが呪霊を祓った。
それにしても少ない。
結構経つが、学生同士で戦ってばかりでゲームのことを忘れている。
「っあ、」
おかしな呪力を察知する。
おそらく、花御。
悟がどうしたと言わんばかりの顔で俺を見た。
となると真人も来ているだろう。
(思ったより早かったな)
仕方がない。
「…悟。変な気配がする」
前に座る悟にだけ聞こえるように、前屈みになって耳打ちした。
悟はそれを聞いて息を吐く。
「変？」
「うん。呪霊…かも」
呪霊、と聞いて眉間に皺を寄せる。
悟が動こうとしたとき、歌姫が先に立ち上がった。
「私ちょっと行ってくる。呪霊がうろついてる森に放置できないでしょ」
二人も画面を見ると、霞が倒れて寝ていた。棘の呪言にやられたのだ。
と思ったのも束の間、俺も悟も動かぬうちに全ての札が赤色に燃え上がった。
東京校が祓ったときも赤だが、札の色は登録された呪力で決まる。
だから未登録の呪力でも、呪力の無い真希がいる東京の色で燃えることになっている。
「悟、ちょっと」
他の人がなんやかんや言ってるが、悟を呼んでまた耳打ちする。
「これ、例の特級なのは確実。でも一体じゃないみたいだからヤバいかも」
「…うん、ありがとう」
不測の事態、どうなるかと学長らを見る。
「俺は天元様の所に、悟は楽巌寺学長と学生の保護を。三那人は歌姫と一緒に行け。冥はここで区画内の学生の位置を特定、悟達に逐一報告してくれ」
「委細承知。賞与、期待してますよ」
「ん」
すぐにその場を離れ、俺、歌姫、悟、楽巌寺学長のメンバーで会場へ走る。
会場に着く前に、歌姫に話しかける。
「歌姫。歌姫は忌庫のほう行って、そっちにも一体いる」
「え…！？」
真人のところに一人向かわせるのは危ないと思い、術式を使って人の形を作った。
それは俺と瓜二つの木偶人形。
歌姫が危ないとき、二回くらいなら身を挺して守る。
「これと一緒に、頼む」
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
