【嗜好・興味：呪霊】.2 (ページ3)

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第50話　左腕③ ページ3

＿＿思わぬ呪力の気配に、意識を覚醒させた。

…これは真人の呪力。

(なにがあった。順平は、悠仁は。俺はどれだけ気を失っていた)

左腕は変形したままだが、右腕じゃなくて良かったと心底思う。

もともと呪われている左腕なら、死ぬほどのダメージが体まで来ることはない。

近くに落ちていた窓の破片に呪力を込め、変形した箇所の根元に当てる。

「…ふ、ぅ………」

顕現させた木の枝を力一杯噛む。

そのまま、勢いよく切り落とした。

「……、ぐッ」

あまりの痛みに思わず悶える。

再び術式で顕現した木を巻き付けてすぐに止血。

切り落とすのは始めてではない。
子供の頃に何度も経験している。

立ち上がって呪力の根源に向かって走る。

体はまだ震えている。
うまく力が入らない。

見えたのは、数ｍに肥大化している真人と悠仁、そしてけーくん。

悠仁は傷だらけで、けーくんはまだ無事に見える。

真人の呪力が減っている。
領域展開でもしたのだろうか。

俺がたどり着く前に、悠仁が真人を殴った。

(なにかおかしい)

今の拍子で真人の気配がずれた。

肥大化した真人は破裂、悠仁は状況が分かっていない。手応えがなさすぎた筈だ。

さっきの一瞬で真人は逃げた。
排水口に逃げ込む真人をけーくんが追撃するも、見失う。

「けーくん！！まだ俺は感知してる！！俺が行く！！」

片腕のない俺は校舎の中から叫んだ。

広範囲に広げた円は、精度は落ちるものの見知った気配くらいは掴める。まだ真人を見失ってない。

けーくんの制止を無視し、真人を追った。

＿＿＿＿＿＿

「あの人は、ほんとにッ…」

一番傷の多い三那人が一人で呪霊を追って行ってしまった。
七海はすぐ猪野に電話を掛ける。

「猪野君、本丸が排水口から逃走しました。えぇ、私といた地点から東南に向けて虱潰しにお願いします。今なら君でも祓える。

華御さんが一人で追っています。
傷が多すぎるので見つけたら保護を」

猪野の了解を聞く前に切り、虎杖を見る。

「私達も追いましょう＿」

ドサ、と倒れる音。

「虎杖君！！」

七海が必死に呼び掛けるも、虎杖の目は閉じていく。

三那人も猪野も心配だったが、こうなれば目先の手当てを優先すべきだろう。

七海は自分が追うのは諦め、虎杖を抱えあげた。