第60話 未来のこと�� ページ13
自分が言い聞かされていると分かった順平は、その意見に反対してくる。
「でもそれじゃ」
「呪術を覚えた意味がない？」
悟にそう言われて押し黙る。図星だ。
俺はもう一度順平を座らせる。
少し落ち着いてもらうために。
「あくまで俺は順平の意見を尊重するつもりだよ。凪さんと相談したいならそれでもいい」
順平は一人で全部抱え込むタイプだから尚更。
相談できる相手が身近にいるのなら、そうすべきだと思っている。
順平は俺達を一度見回して、下を向いた。
どうすべきか考えている。
少しの沈黙のあと、顔を上げた。
「…僕は死にたくありません。人を守れるようになる前に僕が死んでしまったら、母さんを一人にしてしまうから…
だったら呪術師には、なりたくない…です」
居心地が悪そうに、しかし確かにそう言い切った順平。
自分の人生は自分で決めるべきだ。
「本当のこと言うと俺は順平とまだ一緒にいたかったけど、順平がそうしたいならそれでいいと思う」
ずっと黙っていた悠仁も同意した。
俺は順平の後ろに立ったまま、肩に手を置く。
「じゃあ、これからもしお母さんや身近な人が呪いに襲われたときは、順平のその術式で守ってあげてね」
術師としては未熟だけど、よっぽど強い相手じゃなければ十分通用する術式だ。
「皆さん…あの、ありがとうございました」
改めて皆に向き直って礼をする。
それを見届けて、お話は一区切り。
「君のお母さんが起きたらすぐ出ていきなよ。伊地知に送らせるから」
「はい、わかりました」
(また潔高かよ。過労死しないかな…)
それから順平は、母親のところに行くと言ってここを離れた。
＿＿＿＿＿＿
そのあと割とすぐ凪が目覚め、二人は高専から去った。
なんと手回しが早いもので、今まで住んでいた神奈川からかなり離れた県外に悟が家を用意したそうだ。
なんでもありだ。
そして今日は交流会当日。
悠仁はサプライズ登場するらしいが、そんなの知ったこっちゃないと俺一人だけで皆のもとへ向かっている。
確認で一応円をしたが、京都校はまだ合流してないようだった。
葵と真依には以前会っているが、俺は京都校のメンツほとんどが初対面になる。
(仲良くなれるかなぁ)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年5月14日 22時
