606話 ページ31
みんなを置いてあの母親だけ追いかけるわけにもいかず、気配だけを追いながら様子を見ることにする。
なんでだろう?
私を警戒する感じじゃなくて、別の何かを怖がってる?
「…あの人、遅くないか…?」
「た、ただのトイレだよね…お腹壊してるふうでもなかったし」
「あ、でもっ…じゃあ」
「…まさか…」
……?
トイレにしては長く、他の人も不思議に思い始めたのはいいんだが。
なんか知ってる感じだなぁ。
「あの人何かあったの?」
「っ……」
「な、なんでもない…」
不自然に誤魔化される。
分かりやすすぎないか?
仕方ないから誰かの心を読ん__
「あ」
逃げた母親のもとに、また殺意を持った誰かの気配が近付いた。
だから離れんなって言ったのに。
知〜らね、と言いたいところだけど、ここで見捨てたらそれこそみんなに怒られてしまう。
コン
と、狐の呪霊に呪詛師を喰わせ、助けた。
『5点が追加されました』
あぁ、式神でも私に点が入るのか。そりゃあそうか。
私が現場にいるわけではないけど、多分母親は死ぬほど式神に怯えてるはず。
だから無理矢理にでも連れてくるよう狐に頼む。
「……あっ、あっ」
「おかえり」
ビルの合間を縫って戻ってくる狐と、狐の背に無理矢理乗せられている母親。
背中の赤ん坊も無事だな。重畳。
背中から降ろさせて、狐は消す。
式神って見てないところでも動いてくれるのは便利だな。
「ほらね。逃げるのはいいけど襲われたでしょ? もし死にたいなら先に言ってよね」
「あ、の、でも」
「理由があるなら話してよ。私が怖いわけじゃないんだよね」
そう言うと、母親も周りの人も同じような反応をする。
一体何に怯えてるんだ?
守るって言ったのに。
私が強いことはもう分かったと思ってたけど。
「こ、こどもが」
「オイ! それは…」
「私の子供が!!」
母親は、止められながらも言葉を続ける。
「娘が…囚われてるんです…人質、として」
「…………それで?」
「お、俺も父さんが!!」
「私も…」
そこから糸が切れたように口々に出てくる誰かの名前。
親だったり子供だったり友達だったり。
ふーん????
全員誰かを人質にされてるわけね。
「で、何を要求されてるの?」
人質と言うからには、殺されないために何かを提供してるはずだろう。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2023年2月8日 23時