第四十七話 ページ49
寝て、起きて、仕事して
冬が来れば流氷割り。
そんな代わり映えのない日々を過ごし、フォスが眠って一年が経過した。
本当に不老不死になったのかまったく実感がわかないのだが、一年そこらで変わるものでもない。
現在は春、夜明け前で薄暗い。
私は早々に部屋を出て、一階、池の縁に座る。
一年、まだ一年しか経っていない。
細かな出来事を除けばあと百一年。
百一年でフォスが目を覚ます。
逆に言えば、私は百一年代わり映えのない日々を過ごさなければならない。
宝石にとっては普通でも、人間の時間感覚で生きていた私にはとてもじゃないが長すぎる。
もどかしさが私を蝕んでいた。
「はぁ」
時間は飛ばせない。
気が遠くなる。
一日のなかでやることはあれど、大きく見ればとてつもなく暇な日々。
それが百一年。
本日何度目かのため息をついた。
………………
「…ぁ……………」
「ぁ〜…………」
誰かの声が聞こえた。
ふっと立ち上がって耳を澄ます。
「…ぁ……………」
マイクテストのような規則的な発声。
ラジオの放送局をあわせるように徐々に大きく、はっきり聞こえてくる。
あのときと、同じ声。
「誰？」
私も声をかける。
最初に聞こえたとき、二回目もまた返事が返ってくることは無かったが。
「……ぁ あ〜」
「…とどいた」
返事があった。
ただの発声ではなく、今度は言葉が伝わってきた。
届いた、とそう聞こえた。
周囲に誰の気配も無いことを確認し、池の縁にもう一度腰をかける。
「あなたは誰ですか」
もう一度、同じ事を聞いてみる。
少し耳鳴りがして、頭に声が響く。
「やっと 繋がった」
「私は月にいる これは魂が」
「つ なが」
「きこ」
ぷつ、と耳鳴りが止んで声が途絶える。
それ以降、またなにも聞こえなくなってしまった。
「なんなんだ 一体」
頬を掻いて、立ち上がる。
日はのぼっていて、じきに朝礼の時間だ。
教卓に向かおうと足を進める。
ぐるる、と腹の虫が鳴いた。
初めて空腹を感じた。
これまで一切なにかを口にしたことはない。
なぜ、今さらになって。
そんな疑問と空腹を抱えて、朝礼に向かった。
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翡翠(プロフ) - おうるさん» コメントありがとうございます。更新が遅くて申し訳ないです…。励みになります。 (2019年11月19日 19時) (
レス) id: 845110876f (このIDを非表示/違反報告)
おうる(プロフ) - めっっっっちゃこの作品好きです!!!!!更新頑張ってください!!(*^^*) (2019年11月19日 18時) (レス) id: 3d90f48b0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2019年8月14日 2時
