第四十六話 ページ48
「…」
「はぁ」
カンゴームはひとつため息をつくと、頭を掻いて体ごとこちらを向いた。
「…悪かったな」
「避けたりして」
「避けてたんだ」
「はぁ？」
やはり避けられていたようで、珍しくもカンゴームが謝ってきた。
気まずそうな顔をするカンゴームは、また頭を掻いて私から視線をそらす。
「ちっ」
「流氷割り 行くんだろ」
早くしろ、と自分だけ歩いていってしまう。
「ふ」
少しだけ笑いがこみ上げた。
かわいいじゃないか。
私も武器を手に取り、カンゴームに着いていった。
………………
とくに変わりのない日々が続き、なんだかんだで最初の冬が終わる頃。
たまにルチルが起きてきていたがそれ以外は異常なし。
相変わらず大きい寝室の扉を開ける。
「春だよ おはよう」
私の声と、扉から入る日の光で、宝石たちがのそのそと動き出す。
虫みたい。
皆が出ていったあと、私とカンゴームで寝室の片付けを済まし先生のもとへ向かう。
「フォスは まだ目覚めていない」
朝礼は終わったようで、フォスの話をしていた。
「目覚めるまで 観察を続ける」
………………
話が一段落し、宝石たちは活動を始める。
カンゴームは夏眠に入るが私は活動を続ける。
ただ、先生のはからいで三日だけ休暇が与えられた。
働きづめではいけない、とのことだ。
ホワイト企業の鑑である。
………………
フォスのもとへ来た。
頭のあたりの布だけめくり、そっと顔に手を添えてみる。
そのままハラリと髪に触れる。
まるで置物のように静かに眠っている。
…このままもしかしたら目覚めないのではないか。
百二年経っても起きなかったら？
私がいるせいで物語が変わってしまったら？
生気を感じさせないフォスを見ると、急にそんな不安が込み上げてくる。
頭を振り、そんな不安を払拭してフォスから手を離す。
布を掛けようと手をかける。
ふと、フォスの口が少しだけ
開いた
ような 気がした。
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翡翠(プロフ) - おうるさん» コメントありがとうございます。更新が遅くて申し訳ないです…。励みになります。 (2019年11月19日 19時) (
レス) id: 845110876f (このIDを非表示/違反報告)
おうる(プロフ) - めっっっっちゃこの作品好きです!!!!!更新頑張ってください!!(*^^*) (2019年11月19日 18時) (レス) id: 3d90f48b0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2019年8月14日 2時
