第四十五話 ページ47
目を覚ます。
寝間着用の暖かい服を脱いで、冬服、その上にコートを着る。
立て掛けてある武器を持って、廊下に出る。
すっかり体に染み込んだ動作で、フォスが眠って十日目の朝を迎えた。
一階に降りて池の端を歩く。
白い息が気温をより低く思わせる。
がさがさと、紙の音が聞こえた。
この位置だと医務室だろう。
近づくと、しゃがんで棚を漁る宝石がいた。
ルチルだ。
「また？」
側に寄って話しかける。
ルチルは目だけで一瞬こちらを見てすぐ視線を戻す。
「いえ」
「フォスの様子を書き留めておこうと」
十日目…フォスの容態…
たしかに、そんな描写があったような。
ただ、ルチルは相変わらず眠気に抗っている様子だ。
気を抜けばうとうとしている。
私も武器を置いてしゃがみ、棚を開ける。
がさ、と手を入れるとバインダーを見つけた。
「ほら」
ルチルに差し出すと、受け取って立ち上がった。
「ありがとうございます」
フォスの自室は、他の宝石と変わらず二階にある一部屋だ。
そこへ向かおうとするルチルだが、ふらふらしていて心配なので仕方なく私も着いていくことにした。
………………
「頭部に変容はなし」
「いかなる兆候もありませんね」
さらさらと、紙に書いていく。
なにやらパパラチアに仲間の一部を…などという恐ろしいことを書いているように見えたが、気のせいだと思っておこう。
「助かりました」
書き終えたらしいルチルが、バインダーを抱えて私の方を見る。
「フォスになにか変化があれば」
「教えてください」
「わかった」
「でも無理はしないで」
ただでさえ寝不足なんだから、と付け加えた。
その途端、ふ、とルチルが倒れる。
倒れてくるルチルを受け止める。
ルチルが持っていたバインダーが、バサッ、と床に落ちた。
落ちたバインダーをカンゴームが拾った。
バインダー片手に、フォスに布を被せ直した。
「カンゴーム」
「ルチル運べよ」
数日ぶりに顔を合わせたのだが、本人はそんなこと気にする素振りはない。
私とルチルを一瞥すると、さっさと出ていってしまった。
………………
ルチルを寝室まで運び、置いてきた武器を拾いに再び医務室へ向かう。
「…」
カンゴームが腕組みして棚に体を預けたままこちらを見ていた。
「ルチルにも言ったんだろ」
それはきっと私の体の話だ。
出血した際に、ルチルにも伝えている。
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翡翠(プロフ) - おうるさん» コメントありがとうございます。更新が遅くて申し訳ないです…。励みになります。 (2019年11月19日 19時) (
レス) id: 845110876f (このIDを非表示/違反報告)
おうる(プロフ) - めっっっっちゃこの作品好きです!!!!!更新頑張ってください!!(*^^*) (2019年11月19日 18時) (レス) id: 3d90f48b0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2019年8月14日 2時
