第四十一話 ページ43
「フォス 起きるといいね」
「ふん」
鼻を鳴らして、また流氷割りにいってしまった。
………………
冬がはじまって三日が経った。
相変わらず流氷割りや雪かき、寝室のチェックなど日常業務をこなしている。
随分慣れたものだ。
二人で流氷割りをしていると、後ろのほうで大きな音がした。
別の流氷に飛ぼうとしたところだったので滑りそうになったが、踏ん張って音のほうを見る。
「まずい」
どうやら流氷がぶつかった音のようで、カンゴームがつぶやく。
寄ってみると、膝あたりまで足を水に突っ込んでいて流氷に挟まれている。
転んだのだろうか、武器が近くの流氷の上に落ちていた。
流氷は今も動き続けていてキリキリと音を立てている。
いまにも砕けそうだ。
「ぐぬぬ」
武器を鞘にしまって、カンゴームの脇に手を入れ引っ張り上げる。
途中、バキッ、と嫌な音がして、そのまま上げたらカンゴームの足首あたりから下が無い。
流氷にとられてしまった。
「バカ！」
咄嗟にカンゴームから手を離し、隙間から水に飛び込む。
カンゴームがなにか叫んでいた気がするが構っていられなかった。
目前に青黒い水が広がる。
無数の流氷が浮かんでいて視界が悪い。
手に持った武器で砕きつつ、下へ潜っていく。
不思議なことに息は続いていた。
(あった)
ゆっくり沈んでいく足首を見つけた。
邪魔な流氷を砕いて近付く。
掴んだ。
そのまま上に上がる寸前のところで、頭に大きな衝撃がくる。
………………
「…」
気を失っていたようで、目が覚めたのは自室のベッド。
外は暗くなっていて、白い世界の眩しさは無い。
服は簡易的なものに着替えさせられている。
濡れたからだろう。
「起きたか」
廊下から声をかけるのはカンゴーム。
足は接着したようで、安定している。
入り口の壁を背もたれにして、私のほうを見ていた。
「なくさなくてよかった」
そう言って立ち上がろうとしたが、急に目眩がして転けそうになる。
駆け寄ったカンゴームが支えてくれる。
「動くな」
「流氷に頭ぶつけたんだ」
「ごめん」
カンゴームによると、水面に上がる寸前で流氷にぶつかり、気を失ったところを助けてくれたようだ。
私が助けるところ＿立場が逆転してしまったようだ。
苦笑いを浮かべる。
「おまえ フォスみたいなところあるよな」
「なんと」
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翡翠(プロフ) - おうるさん» コメントありがとうございます。更新が遅くて申し訳ないです…。励みになります。 (2019年11月19日 19時) (
レス) id: 845110876f (このIDを非表示/違反報告)
おうる(プロフ) - めっっっっちゃこの作品好きです!!!!!更新頑張ってください!!(*^^*) (2019年11月19日 18時) (レス) id: 3d90f48b0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2019年8月14日 2時
