吸って、吐いて、縋る。【伏黒恵】

第40話 ページ40

任務が言い渡された。


伏黒とAだけで祓える呪霊との事で、今回は野薔薇も虎杖もいない。


今は補助監督の運転する車で移動中。


2人での任務はこれが初めてだし、結構うきうき気分だったんだけど、



「任務終わったら、一緒にご飯食べて帰ろっか。」


「ああ、そうだな。」


「伏黒の大好きな生姜焼きでも食べる？」


「ああ、そうだな。」


「......私、五条先生にガチ恋してるんだよねー。」


「ああ、そうだな。」


「はぁ....」



伏黒がなんかいつもと違う。


いくら話しかけても、『ああ、そうだな。』としか言ってくれない。


任務に出てる時はいつも真面目で冷静なのに、補助監督の話もろくに聞いてなかった。


...何かあったのだろうか。


私は伏黒のおかげで家族との関係にケリを付けることが出来たから、

伏黒に悩みがあるなら肩を貸してあげたい。


...というか、頼って欲しい。


変に気を使わないで、何もかも私に話してほしい。


でも、それが難しいってことも私だって重々承知してる。


...だって、私と伏黒は付き合ってないんだから。



「ふーしーぐーろ。今任務中。まだ車の中だから良いけど、

戦闘中もその調子でいられると困るよ？なんせ私は4級呪術師。

いくら弱い呪霊だって倒すの一苦労なんだから。」


「...悪い。任務中に他のことを考えてるなんて良くないな。」


「まあ、でも伏黒がそんなに考えてるってことは何か悩みがあるってことでしょ？

役に立たないかもだけど、相談には乗るよ？」


「...ありがとう。でも、大丈夫だ。俺1人で解決してみせる。」


「....そっか。」



ほら、やっぱり。


伏黒が私に相談してくることはない。


付き合っているという肩書きがないから、相手に相談して迷惑かけていいのか不安なんだ。


...私達はそういう仲だから。


お互いがお互いを本当に好きで求めあってるからこそ、迷惑をかけたいと思わない。


付き合っているという肩書きがあると、”彼女だから大丈夫””彼氏だから大丈夫”とどうしても

甘えてしまうところがある。


そしてそれは、相手を縛り付けるということだ。


彼氏(彼女)だから他の人に目移りしないよね？という圧になる。


それは嫌だ。家族に縛り付けられたことがあるからこそ、伏黒を縛り付けたいとは思わない。


...だから多分、私達が付き合うことは一生ない。




「現場、着きましたよ。気をつけてくださいね。」


「...伏黒、行こっか。」


「...ああ。」

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