主従関係【乙骨憂太】

命令 ページ9

コンコン、と部屋のドアが叩かれた音がする。



誰だろう。真希とかかな....？




部屋の整理も大方終わったことだし、何も考えずに部屋のドアを開けた。





「Aちゃん、部屋にはもう慣れた？」



「あ、乙骨くん。いつの間に帰ってたんだね」



「.....どうだった？その、上層部の人たちは」



「大丈夫だよ、話はつけてきたから。Aちゃんは安心してここに居ていい」





良かった....と安堵のため息が漏れる。





「やっぱり心配だった？」



「そりゃそうだよ。私は高専に乗り込んだ呪詛師なわけだし.....」



「乙骨くんに生かしてもらったのだってまだ実感が湧いてない」





私は今日、本当は乙骨くんに殺されるはずだったわけで。



今こうやって部屋を用意してもらって、

優しい仲間にも恵まれているという状況に違和感を覚えている。




乙骨くんの気まぐれがなかったら、私はもうとっくに命を断っているんだ。





「まあ生かしてあげたっていうか、従うか死ぬかの選択肢をあげただけなんだけどね」



「そのー、ずっと気になってたんだけどさ。従うっていうのは具体的にどういう....？」



「あ、いや、出来ることならなんでもするよ？するんだけど、気になるっていうか」



「うーん。どういう、って言われると難しいんだけどな」



「あ、実際に1個命令してみよっか」





なぜだか体が異様に身構えてしまう。



だ、大丈夫。生死に関わるような命令は来ないはずなんだから。





「じゃあAちゃん。僕のことはこれから乙骨くんじゃなくて憂太って呼んで」



「え.....？」



「ほら、呼んでみて？憂太って」



「えっと.....憂、太」



「うん。それでいいよ」



「あと、自分は元呪詛師だからーとか言って自分を下げるのはやめて。

僕には従ってもらうけど、その前に同期であることは変わらないんだから」



「わ、分かった.....」





.....これが命令？



もっと、難しいことを要求されるのかと思ってた。




乙骨くん.....いや、憂太は何を考えてるんだろう。





「どういう命令をされるのかに関しては、少しずつ分かっていけばいいよ」



「でも......今みたいに簡単な命令だと思ってたら、後々痛い目見るかもね？」





少し意地悪な笑みを浮かべながら、憂太は部屋を出ていった。





「どういうことなんだろう.....」

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