主従関係【乙骨憂太】

屁理屈 ページ37

「それは....」





憂太が私を、大事に想ってくれている。



そうじゃないとこれまでの行動が矛盾するし、それが正しいってことは分かってるんだけど。




....でも、どうしても飲み込めない。




私は高専を襲った身で、つまり元呪詛師で、憂太を殺そうとした。



憂太は私を嫌悪するはずなんだ。



大事な仲間を、場所を、私は奪おうとしたんだから。




私には彼の行動の意図が分からない。



私を大事にしてくれているという現実を、受け止めきれない。





「....分かってても受け止められない、か」



「え、？」



「どうせそう思ってるんでしょ？」



「な、なんで分かって....」



「いや、憂太もおんなじようなこと言ってたなって思ってさ」





憂太も、私と同じようなことを....？





「A、知らないかもしれないけどさ。憂太って1度死刑にされかけたんだよ」



「....え！？」



「憂太的には隠してるのかもしれないし、あまり詳細は言えないんだけどね。

憂太は死刑を受け入れてた。抵抗だってしなかった」



「でも僕が彼を許したんだ。

その力は人の為に使うべきだ、投げ出すにはまだ早い、ってね」



「そしたら高専での生活にも慣れてきた頃にさ、言われたんだよ。

あんなに酷いことをした僕と親しく接する気持ちが理解出来ない....って」



「全く同じだと思わない？今のAと」





憂太も、私と同じ立場だった時があったのか。



罪悪感に飲まれて、勝手に疎外感を感じていたような時が。




....知らなかった。



私は憂太のこと、結局何も理解できてないんだ。





「憂太もAも、深く考えすぎなんだよ。

理解できないから何がいけないの？ていうか、大切に想うことに理由ってある？」



「ただ僕が大切だと思ったから、僕は憂太を他の生徒と同じように接した。

憂太だってきっとそうだ。過程はどうであれAを大切だと思ったから大事にするんだ」



「世の中結果論だよ。理屈なんて通らなくてもいい。屁理屈でいいじゃんか」





....そっか、その通りかもしれない。



理由とか理屈とか過程とか、そういうのは関係ないのかもしれない。




憂太が私を大切にしてくれている。



それ以上でもそれ以下でもない。





「....ありがとうございます。なんか、霧が晴れた感じがします」





丁寧にお辞儀をして、自分の部屋に続く廊下を歩いた。

自問自答→←相談

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す