主従関係【乙骨憂太】

相談 ページ36

「あれ、Aじゃん。もう傷大丈夫なの？」





医務室を出てすぐの廊下で五条先生とすれ違う。



....あれ、私の怪我のこと先生も知ってるんだ。




一日中寝てしまって授業も出席していないし、

五条先生を始め真希たちにもやはり私の怪我はバレてしまっているのだろうか。





「安静にしててとは釘を刺されたんですけど、医務室に居座るのもあれかなって思って....」



「相変わらず真面目なこと言うね〜。

僕なんてよく医務室に居座って仕事サボってるっていうのに」



「強いからこそ許されてるんですよ、それ」





まあ僕最強だしね〜！と調子に乗り始める五条先生。



....やっぱり言わなかったほうが良かったかな。





「にしても浮かない顔してるよね、A」



「え？」



「怪我したからってわけでもなさそう。何かあった？」





突然真剣な顔でそんなことを言われるもんだから、私も少々身構える。



特に悩んでるってわけではないけど、そう見える原因と言ったら1つしか浮かばない。





「最近分からないんです。憂太のことが」



「分からない？」



「私達の関係って、ちゃんとした上下関係があって成り立ってるんですよ。

私は生かしてもらっている立場で、憂太にとってただの道具にすぎない。そのはずだったんです」



「....でも、優しいんですよ。

私のことを常に気にかけて、傷ができたら完璧に治して、心配だとまで言い放って」



「憂太にとって私って、結局何なんでしょうか」






自分でも変なことを聞いているという自覚はある。



でも、やっぱり変なんだ。



こんな関係性だったらもっと適当にあしらわれたり、

極論もう反感を買ってしまっていて殺されている....という可能性もあるのに。




あの人は、優しすぎる。



最初はお人好しが故の行動なんだな、で自己完結していたが、今はそうもいかない。




彼の私に対する態度は、どう考えてもこの関係性に見合わない。





「憂太の気持ちなんて憂太にしか分かんないし、僕にはその質問に対する答えは分かんないな」



「....でも、客観的に見て、1つだけ言えることがある。

それは憂太が、本当に本当に心の底からAのことを大切に思ってるってこと」



「最初憂太がAをどう思ってたとか、本当に道具として生かしたのかまでは知らない。

でも今の憂太は絶対にAをAとして、ちゃんと大事にしてる」



「それはAでも分かるんじゃない？」

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