主従関係【乙骨憂太】

重症 ページ34

「ありがとうございましたー....」





ため息混じりの声で補助監督さんにお礼を言う。



やっと、寝れる....




私はふらふらとしながらも高専に入った。



いつもと変わらないはずの廊下が長く思える。




そんな中ぼんやりと見える白い制服。



あ、あれはもしかして....





「憂太....？」



「あれ、Aちゃん？任務終わった....の.....」





表情まではちゃんと捉えられない。



でも、急いで私の元に駆け寄る姿は酷く焦っているように見えた。





「動かないで。止まって」





私を優しく抱きしめて横たわらせる。





「本当にどうしたのこの傷....なんでそんな何事もなさそうにしてるの」



「傷....？右腕のかすり傷のこと....？」



「他にもたくさんあるでしょ。全身かすり傷だの切り傷だので血まみれになって...」



「....もしかして気づいてないの？Aちゃん」





嘘、右腕以外にもかすり傷が....？



全く気が付かなかった。



しかも、何箇所もあって出血が酷いって....



だから補助監督さんもあんなに心配そうにしてたのか。





「本当に馬鹿....どうせ寝不足だからでしょ」





私の身体を呪力が覆う。



暖かくて、優しくて、憂太を感じるような、そんな呪力。




反転術式。



憂太と戦って負けたあの時と同じやつだ。





「僕はAちゃんのこと、いくらでも治せるよ。

反転術式が使える限りは永遠とね。なるべく跡も残さず治してあげられる」



「でもきっと、僕が治してくれるからって傷を放置してたわけじゃないんでしょ？

寝不足で何も考えてなくて、傷にも気づかずにいたんだよね」



「....そういうの、本当にやめて。命をなんだと思ってるの」





口調は怒っているのに、表情はどこか焦っている。



余程不安なんだろうなという、そんな思いを感じる。




きっと憂太は、私のことを本気で心配してくれている。





「ご、めん。私が軽率だった」



「....とりあえず休みな。話は今度聞くから」





ひょいっと抱えられて、すたすたと医務室の方向まで連れて行かれる。





「え、ちょ、私重いし抱えてくれなくても....」



「思うように歩けもしない人に言われたくない」





....それは本当にそのとおりだ。

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