閉じ込めちゃいたい【乙骨憂太】

気配 ページ28

「......結局、何も分からなかったな」





やるせないこの気持ちをどうにかして晴らそうとして、乙骨くんに思いを伝えたのに。



逆に分からないことが増えてしまった。



意味のわからない発言に頭がもっと混乱する。




......私は変わらず乙骨くんのことが好きって、どういう意味だろう。



そんなことないって思ってるはずなのに、その言葉が酷く頭の中で繰り返される。






あの後乙骨くんは支度をして、授業を受けに行った。



いつもどおりの生活。どんよりとした部屋に、私はただ一人ぼーっと過ごしている。




でも今日は何故か、扉の近くから異質な気配を感じた。





「.......誰か、いるの......？」





気になって扉の近くに寄ってみる。




.....間違いない。



この扉の向こうには、誰かが立っている。




膨大な呪力量。洗練された呪力の流れ方。



乙骨くんと似たようなものを感じるけど....多分乙骨くんではない。



ずっと近くで見てきたから、乙骨くんの呪力だったら速攻で気づいているはずだ。





「.......分かってるよ。そこにいるんだよね」



「―――A」



「.....っ、！？」





優しい低音が扉越しに鳴り響いた。



.....嘘、なんで私がここにいるっていうことを知ってるの。




乙骨くんはみんなに嘘ついて騙したはずなのに。



これまでずっと誰にもバレてなかったのに。





「ここにAがいるっていう確信があるわけじゃないんだけど.....可能性はあるかなって」



「だから今こうやって扉越しに話しかけてる」





こんな落ち着いた口調、なかなか聞く機会ないけど.....間違いない。




......五条先生だ。





「Aのことは、ずっと疑問に思ってた。

憂太は失踪したって言うけど、そんな素振り全く見せてこなかったし....君はそんなか弱くない」



「でもまあ、いないっていうのは事実だからね。そういうもんかって流してきた」



「そしたら昨日、真希が教えてくれたんだ。

憂太が物陰に隠してた何かに、微かだけど呪力を感じられたんだって」



「.....それがもしかしたらAかもしれないから、探ってほしいってね」





昨日の出来事が頭にフラッシュバックする。



そっか、あの時に―――





「ずっと気づかなくてごめん。独りにして、怖い思いさせててごめん」



「もしそこにいるなら、声が出せる状況なら......」



「僕に返事をしてくれないかな」

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