閉じ込めちゃいたい【乙骨憂太】

分からない ページ24

「......真希の声、久々に聞いたな」





この部屋に閉じ込められてから、ずっと乙骨くんの声しか聞いてこなかった。



最近耳にした他人の声はカフェの店員さんの声。



知ってる人の声はここしばらく聞いてない。




......狗巻くんとパンダくんの声、どんな感じだったっけ。



思い出そうとすればするほど分からなくなる。



全てが乙骨くんの声で塗り替えられていく。





「.......乙骨くん、任務って言ってたな」





私がここに閉じ込められてからというもの、確かに乙骨くんは一度も任務に出ていなかった。



どうやってそれを可能にしているのか分からないが、

どんな日でも授業終わりにはすぐこの部屋にいた覚えがある。





......そうだ。任務に行ったってことは、乙骨くんは高専内にいないんだ。



ということはもし大声を出して助けを求めても、乙骨くんにバレることはない。



さっき視認したとおり真希もいる。



つまり私は、大声を出せばこの部屋から逃げられる。





「..........っ、」





あれ、声出ない。



体がガクガクと震える。逃げようとする自分を、自分が無意識に拒絶している。




.......そっか。私、怖いんだ。



何度も逃げようとして、その度に怒られて、罰を与えられて、ここに縛り付けられる。



それが嫌なんだ。どうしようもなく怖いんだ。




乙骨くんへの恐怖が、私をここに縛り付けている。





「私、私は..........」



「本当に、乙骨くんのことが好きなのかな.........」





もう、何も感じなくなってしまった。



乙骨くんへの恋情も、憧れる気持ちも、普通の恋人になりたいという思いも。



私がただ1つ感じることが出来るのは、乙骨くんへの恐怖。




また傷つけられないように。もっと酷いことされないように。



乙骨くんの機嫌を損ねないように、言葉を選んで行動して。




それって本当に、好きな人に対する感情なのかな。



私が乙骨くんに対して抱いてるものは、恐怖だけなのかな。





「分かん、ない」



「もう何も分からないよ.......ｯ」

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