閉じ込めちゃいたい【乙骨憂太】

味 ページ15

「ん.......？」





まだポヤポヤとしていて頭がうまく働かない。



部屋は心地良いほどに温かくて、毛布が何枚も私に被せてある。




......私、あのまま寝ちゃったのか。





「あ、起きた？」



「暖房も付けてたし、うとうとしてすぐ寝ちゃったんだよ。Aちゃん」



「今何時......？」



「19時過ぎ。ざっと4時間くらい寝てたんじゃないかな」





慌てて時計を見ると、確かに現在時刻は午後7時だった。



今日もまた無駄な時間を浪費してしまったことに罪悪感を覚える。





「でもちょうどよかった。夜ご飯、今作り終えたとこなんだよね」



「じゃじゃーん。今日は寒いし、Aちゃんの好きなシチュー作ってみたんだ」





他にもテーブルには、グラタンやパスタなどの洋食が並んでいる。



とても簡単には作れそうにないものばかり。



僕が作りたいからAちゃんは作らなくていいよ、とは言われているものの、

毎日ここまでされては流石に申し訳なくなってくる。





「じゃあAちゃん。口開けて？」





大人しく口を開ける。



手にも鎖を付けられてからというもの、乙骨くんが私にご飯を食べさせてくれるようになったのだ。





「.......」



「......え、美味しくなかった......かな」





美味しくない、なんてことはないんだと思う。



だってこれは私が大好きなシチューだ。しかも乙骨くん特製の。



美味しいに決まってる。決まってるはずなんだ。




......でも。




なんでだろうな。なんか、いくら口に入れても―――



全く味がしない。





「......ううん、美味しいよ」





でもきっとこれは美味しいはずだから。



多分、私の感覚がぶっ壊れ始めてるだけだから。



......乙骨くんの求めてる答えは、これなはずだから。





「そっか、良かった」

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