閉じ込めちゃいたい【乙骨憂太】

好き ページ1

最低気温5度の真冬。



そんな日に無慈悲にも降り注ぐ大粒の雨。



寒くてたまらないはずなのに。



私の体はびくりとも動きそうにない。





―――あ、死ぬ。





そう悟った瞬間、私の脳内に溢れ出すみんなの顔。




......分かってたはずなのにな。




呪術師なんて職業やってて、寿命まで生き延びた人なんて聞いたことないのに。



どうしてこんなにも辛くなるんだろう。






「.......っ、Aちゃん、！」






そんな時、私の目の前に現れたのは大好きなあの人で。



地面にひれ伏す私をふわりと抱きしめて、優しく、優しく、背中を叩いた。






「気づくの遅くてごめんね。痛かったよね。辛かったよね」



「もう大丈夫だから」






光のようなものに包まれて、傷口に染み渡っていく。




.....あ、温かい。




どんなに冷たい風よりも、雨よりも。



乙骨くんの温もりと優しさが、私を支配する。






「.....大丈夫？動けそうかな」






私の指がぴくっと動いた。






「......良かった。死んじゃったかと思って焦った」






そっか。反転術式、か。



乙骨くんは使えるというのを聞いたことがあるような気がする。




......私も、死んだかと思った。






「おっこつ、くん」



「うん。どうしたの？」






ずっとずっと、影で追いかけてた。



でも自分なんか、って思って隠して、必死に抑えて。




......けど分かったんだ。



私の時間は有限。もちろん、乙骨くんも。




だから―――






「私、私ね......」



「乙骨くんのことが、たまらなく好き」






振り絞った力で乙骨くんを抱き寄せる。



離したくなくて、その真っ白な制服をぎゅっと掴んだ。






「......ふふっ、そっか」






とろけるような優しい口付け。



私の気持ちに応じるように、つま先から頭のてっぺんまで綺麗に塗り替えられた気がした。






「僕も好きだよ、Aちゃん」





「―――閉じ込めちゃいたいくらい」

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