episode.8 ページ8
.
“処分しない”その言葉に沈黙を守っていた幹部達が、何か言いたげに口を開こうとするが様子見するかのようにその口を閉じた。
目線はグルッペン・フューラーから私へと戻ってくる。『お前が聞け』ってことか。
「…目的は何ですか」
渋々口を開く。自分の首を狙ってきた敵を処分しない理由は何なんだ。混乱と困惑を隠せず腹の内を探ろうと思ったが、その答えは案外すぐに返ってきた。
「俺の目的は唯一つ。俺は君が欲しい。君のその力をこの我々国の為に尽くしていただきたい」
その男はさらりと涼しい顔でそう言った。
一瞬のタイムラグが空間を支配する。私や幹部達でさえ予想もしていなかった言葉に言葉を失うが、それも束の間、誰だったか一人声を荒げるとドミノ崩しのように周りも声を荒げていった。
「またグルさんそんな突拍子もない考えでそうやってほんま…ほんまに…」
軍服姿に特徴的な赤マフラー、いかにも明敏そうな眼鏡をかけている男性は手で顔を覆い、あまりにも深すぎるため息をついている。
「ちょっ…いくらなんでもそれはマズイんやないか⁉︎相手侵入者やぞ⁉」
続くようにその隣で座っている男の子が人一倍声を荒げた。『天』と書かれた布から少しばかり覗かせる顔は、言わずもがな鬼の形相だ。
私が声を荒げる隙もないほど、幹部らは声を荒げる者も居れば、無言で様子を見ている者もいるが腑に落ちないように腕を組んでいる。
そんな飛び交う論争の中、気怠げそうに見守っていたスーツ姿の男性が声を上げた。
「俺はまぁグルちゃんに賛成やで。胸はあらへんけど大器晩成型やろ。ええんちゃうの引き入れても。ただ最悪誰か手にかけたりとかせえへん？自分の身は自分で守りたいんだけど」
なんか頭にくるような言葉が聞こえた気がするけど、今は聞き流そう...。
改めてグルッペン・フューラーの方へと目線を戻す。
この男は自分自身は勿論、国家へのリスクを理解していないんだろうか。
しかしそんな発言の内容にグルッペン・フューラーは真っ直ぐに、堂々と言い放った。
「確実な保証ならある。間違いなくこいつは俺も、俺以外も、手にかけるつもりもさらさらないさ。そうだろう？」
_____確実な保証。
鋭い視線に対して、私は肩をすくめた。
何を根拠に？とは聞かなかった。
多分この男は分かっているのだろう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
haiiro(プロフ) - さん» 勿体ないくらいのコメントありがとうございます！今後も地道な更新ですが、よろしくお願い致します。 (2021年7月5日 23時) (
レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
haiiro(プロフ) - きのこさん» こちらこそお読みいただきありがとうございます。楽しんでもらえて何よりです…！ (2021年7月5日 23時) (レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
- 誤字失礼しました、更新いつまでも待ってます！ですm(_ _;)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
- すごい！こんな神作品見たことないです…更新いつまでも待ってるんです、無理はしないでください！初コメ失礼しましたm(_ _)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ストーリーがめちゃくちゃ面白くて引き込まれました…！神作品を作っていただきありがとうございます！！ (2021年6月27日 20時) (レス) id: 40eb1cfd02 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：haiiro | 作成日時：2021年1月23日 20時
