episode.4 ページ4
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「ﾊｯ、ガバったな」
確かに喰らわせたはずだ。撃ち込んだ球が掠った訳でも、また外した訳でも無い。
だが男は変わらずピンピンした様子でいっそう愉しげに笑い、片手に持つナイフとは反対の手で腕を大きく振って顔面へと思いっきり右ストレートをぶち込んできた。
「ッ___！」
歯を食いしばり、痛みで気がどこかへ行きそうになる意識を必死に手繰り寄せ繋ぎ止める。怯んではいられない。次の一手を考えなければ。
が、一つ瞬きをして目を開けると視界は鮮血に花を咲かせていた。
何が起こったのか。ただゆっくりと、無意識に、手がある場所へと向かっていく。
その場所へと辿り着き軽く撫でてやると、大きな亀裂が腹部に入っていた。
「ぁ______」
一瞬自分の身に何が起きたのか理解できなかったが、生暖かいものが一気に口から溢れ出て全て理解した。
____死ぬ。
本能が真っ先にそう感じた。冷たい地面へ膝から落ち、身体は脳の指令に従って身を守る様に丸くなる。死にたくない。か細い呼吸で必死に酸素だけを取り込み、どうにかこうにか意識を保つ。
脳内麻薬ですら誤魔化し切れない痛みに身体は震え、全身の血の気が引いていく感覚が肌に直接伝わってきた。
熱い。熱い。熱い。
ドクドクと脈が早く打ち血液が素早く体内を循環していくが、その努力も虚しく全て排出されてしまうというのに。身近に迫ってくる死の恐怖に徐々に感情も思考も支配されていく。
しかしそんな状況でも無慈悲に靴音を立てて一歩一歩、確実に男はこちらへ近づいて来ていた。
「変に____急所外し___ん。______傷入れられて叫ばへ_____外やけど。__やないな」
男が何かを言っているが、既にそれを聞き取る力も残されていない。視界ですら明滅していてはっきりしないが、男が留めを刺すためにナイフをこちらへ向けているのは微かに見えた。
ただその視線は不可解にも私ではなく、自身の足元を見下ろしている。
足元に転がる発煙手榴弾の方へ。
まさか、と男が分かりやすく表情を歪めた。そりゃそうだ。こんな瀕死状態の人間に何が出来るもんかと思っただろう。
倒れ込んだ後相手に悟られない様に、身体を丸めて発煙手榴弾のピンを抜いていたんだから。
してやったりと笑みを向けてやった。
「クソッ_____‼」
その瞬間廊下にたちまち煙が立つ。同時にもう動くことすらままならないはずの足を、全力で奮い立たせ地面を削る勢いで走った。
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haiiro(プロフ) - さん» 勿体ないくらいのコメントありがとうございます！今後も地道な更新ですが、よろしくお願い致します。 (2021年7月5日 23時) (
レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
haiiro(プロフ) - きのこさん» こちらこそお読みいただきありがとうございます。楽しんでもらえて何よりです…！ (2021年7月5日 23時) (レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
- 誤字失礼しました、更新いつまでも待ってます！ですm(_ _;)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
- すごい！こんな神作品見たことないです…更新いつまでも待ってるんです、無理はしないでください！初コメ失礼しましたm(_ _)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ストーリーがめちゃくちゃ面白くて引き込まれました…！神作品を作っていただきありがとうございます！！ (2021年6月27日 20時) (レス) id: 40eb1cfd02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haiiro | 作成日時：2021年1月23日 20時
