episode.3 ページ3
.
その言葉を合図に握りしめていたライフルを取り出そうとするが、予備動作も無かった男にダガーナイフを取り出され喉仏に刃の侵入を許していた。
しかし喉仏に刃が食い込む寸前で身体を後ろへと引き、その勢いのまま背をそらし手をついて更に後方へと身体を弾き飛ばす。その瞬間わずかに男の顔が垣間見えた。
その男の表情は自分の攻撃を避けられたのにも関わらず変わらず口の端を歪ませたまま、恍惚を浮かべている。
狂気
何故この状況でこうも笑っていられるのか。恐怖で自分の産毛が逆立つのを感じる。相手を間違えた、そう瞬時に悟った。
「___そんな気ぃ抜いとってええんか？」
呆気に取られていると、胴体へ重く足蹴りを喰らわされ受け身を取る暇も無く、身体が勢いをつけて宙へと跳ね飛ばされる。
「くっそ…！」
瞬間内臓が浮き重力に従って身体が重たくなる。このままなら地面に歓迎されてお陀仏。それだけは御免だ。
文字通り必死に目を左右に動かして辺りを見渡し、すぐ側の渡り廊下で目を止めた。
塔の煉瓦に爪が捲れそうな勢いで手をつき、側面を蹴って渡り廊下の床へと転がり込む。
いささか乱暴な着地ではあるが、少し身体が痛むくらいで済んだのだからマシな方だ。爪の方はあまり見たくないけど。
だが少しは距離を離せただろう。
そう安堵していたのも束の間、
「___待ってくださいよぉ！」
その声に思わず身体が硬直し、振り返れば視線の先、月光が斜めに差し込む通路の奥で人影が見えたかと思えば至近距離に刃が通った光の筋が僅かに映る。大きく振りかぶられたナイフは軽く右腕を撫でていった。
本物の戦闘狂だ。兵士、というより多分こいつが我々国の幹部の一人だろう。
息も絶え絶えで汗が絶え間なく全身から流れていく。いつまで攻撃を凌ぐことができるのか分からない耐久戦に、一方的に体が絞られていく。
それに比べて男は余裕そうにただナイフを振りかざすだけ。
まるで埒があかない。
体を地面スレスレまで伏せ、男のダガーナイフが空を切る。その瞬間身体を捻らせてこれでもかと胴体に一蹴りお返ししてやった。
しかしほんの少しのタイムラグがあっただけでダメージなんてとても呼べた物では無い。
ただ、武器を取り出す時間を作れただけ十分だ。懐から取り出したライフルを狙い目に焦点を合わせて向ける。
刹那、廊下に重い銃撃音が響いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
haiiro(プロフ) - さん» 勿体ないくらいのコメントありがとうございます！今後も地道な更新ですが、よろしくお願い致します。 (2021年7月5日 23時) (
レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
haiiro(プロフ) - きのこさん» こちらこそお読みいただきありがとうございます。楽しんでもらえて何よりです…！ (2021年7月5日 23時) (レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
- 誤字失礼しました、更新いつまでも待ってます！ですm(_ _;)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
- すごい！こんな神作品見たことないです…更新いつまでも待ってるんです、無理はしないでください！初コメ失礼しましたm(_ _)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ストーリーがめちゃくちゃ面白くて引き込まれました…！神作品を作っていただきありがとうございます！！ (2021年6月27日 20時) (レス) id: 40eb1cfd02 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：haiiro | 作成日時：2021年1月23日 20時
