episode.20 ページ20
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しばらく長い廊下を歩いて、その足は見知らぬドアの前で止まった。私の処遇について話し合った部屋とはまた別の部屋だ。この先に恐らくあいつはいるのだろう。
「連れてきたで」
ノックもせず、返事も待たずにゾムさんは躊躇いなく扉を開ける。
「やっと来たか」
部屋に入ると正面、グルッペン・フューラーが椅子に腰掛けていた。
端的にそう言葉を口にしては、その目をわずかに細める。
「その後、身体の調子はどうだ？」
嘘でも最悪ですと言いたい所だが、深々入った腹部の傷もその他の傷も今では痛みを感じさせない。
「おかげさまで。ご丁寧な軍医に治療していただきましたので。それで、私に何の用でしょうか」
「正確にはゾムにも用があるんだが。ある任務を頼みたい」
「俺もかよ...」
そうぼやくゾムさんの方を見ると、分かりやすく顔をしかめていた。その心意なんてもはや聞かなくとも分かる。
単純に私と任務をこなすことの億劫さが顔に出てきているのだろう。気の毒に。ちなみに私も同じ気持ちだ。
などと考えていることにグルッペン・フューラーは眼中にもなく、「実は」とこちらへ顎をしゃくると、
「最近国内であちこちをかぎまわっている輩が居るらしくてな。その輩を捕まえてきてもらいたいんだ」
「...
そうゾムさんが呟き、グルッペン・フューラーは肯定するよう静かに頷いた。
何処の国でも観光客は珍しく無い。が、戦争しまくって未だ敗北を知らないと来たら形相変えて他国から観光客が飛び込んでくるのには納得出来る点がありすぎる。
「でもそれ位なら、衛兵に任せておけば良いんじゃないんですか？」
「それ衛兵ですら手を焼く相手のようでな。直接向こうから依頼が来たんだ」
我々国の鍛え抜かれている衛兵が手を焼く相手となると、向こうは相当な手練れだ。そんな観光客を送り込む事ができる国自体もデカい可能性が高い。
「相手次第では、こちらもすぐに動かなければならない。頼めるな？」
許可でも取るようにグルッペン・フューラーは此方を見て返答を待つが、その言葉にはいささか違和感があった。
「拒否する権利なんて最初から私に無いでしょう」
『だから許可なんて求めるな』そんな言葉を嫌味を込めて目で訴えると、それが伝わったのか応じるように、
「そうだな。俺の言い方が悪かった。これは“ 命令 ”だ。観光客を捕らえてこい」
重たいバリトンボイスが部屋に響き渡った。
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haiiro(プロフ) - さん» 勿体ないくらいのコメントありがとうございます！今後も地道な更新ですが、よろしくお願い致します。 (2021年7月5日 23時) (
レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
haiiro(プロフ) - きのこさん» こちらこそお読みいただきありがとうございます。楽しんでもらえて何よりです…！ (2021年7月5日 23時) (レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
- 誤字失礼しました、更新いつまでも待ってます！ですm(_ _;)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
- すごい！こんな神作品見たことないです…更新いつまでも待ってるんです、無理はしないでください！初コメ失礼しましたm(_ _)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ストーリーがめちゃくちゃ面白くて引き込まれました…！神作品を作っていただきありがとうございます！！ (2021年6月27日 20時) (レス) id: 40eb1cfd02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haiiro | 作成日時：2021年1月23日 20時
