episode.19 ページ19
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二人に医務室まで案内されてからは、すぐに私の傷の治療が始まった。模擬戦時の傷は案外すぐに回復したが、腹部には微かにその名残を残している。それでも傷の回復自体は早い方らしく、少し驚かれていた。
そして私が多少動けるようになったのは、かれこれ一週間後。
「本当に大丈夫？医者としては、まだ安静にしててほしいんやけど...」
仮契約とはいえ敵である私に不安そうな顔を向けるのは、我々国の軍医しんぺい神さん。名前は治療中に聞いたが、容姿から何かしっくりくる名前だなとぼんやり思っていた。
「いえいえ。ずっとベッドで寝てる訳にもいきませんし」
「そっか。でも一応痛み止めは渡しておくから何かあった時には飲んでな」
「はい」
相変わらず仕事に懸命で勤勉な人だ。この人の前では自分もただの患者に過ぎないんだろう。そんな接し方のせいか、不思議と私も敵ではなく医者という認識で接していた。
それからは、やっと身体が動けるようになった事に安堵しつつ着慣れたマントを羽織り、武器が中に入っていることを確認してからブーツに足を通した。
少しだけ名残惜しさを感じつつ、
「あ...ありがとうございました」
医務室を出る前に、礼儀として慣れないお礼の言葉を漏らすとしんぺい神さんは少し驚いた様子で、言葉を詰まらせたが私の言葉に遅れて「お大事に」と軽く微笑んで医者らしい言葉を残した。
しかし医務室を出てすぐ、あっさりと私の思考はアサシンとしての仕事モードに切り替わる。
今すぐグルッペン・フューラーをとっ捕まえるのもある種の手だが、幹部や兵士が私に警戒していない訳がない。流石に多勢に無勢だ。となると、今私に出来ることは信用を勝ち取ることか。
そんな考えを巡らしているとふと、見覚えのある男性がその場に立っている事に気付く。
「ぞ、ゾムさん...」
特徴的なクリーパー柄の刺繍が入った緑色のパーカーの男性を、誰かと見間違える筈もない。
「やっと回復したんか。そのまま一ヶ月ベッドで寝てて良かったんやけど」
「...私も出来ることならそうしてましたよ」
誰のせいだと思ってんだ。鋭い視線で恫喝するが、ゾムさんは全く気にしていないようで話を続ける。
「グルッペンから呼ばれとる。大人しく着いてこい」
「えぇ...さっそくですか...」
仮にも病み上がりなんですが、と内心で付け足し渋々ゾムさんの背中を追いかけることにした。
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haiiro(プロフ) - さん» 勿体ないくらいのコメントありがとうございます！今後も地道な更新ですが、よろしくお願い致します。 (2021年7月5日 23時) (
レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
haiiro(プロフ) - きのこさん» こちらこそお読みいただきありがとうございます。楽しんでもらえて何よりです…！ (2021年7月5日 23時) (レス) id: 5cfb19773b (このIDを非表示/違反報告)
- 誤字失礼しました、更新いつまでも待ってます！ですm(_ _;)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
- すごい！こんな神作品見たことないです…更新いつまでも待ってるんです、無理はしないでください！初コメ失礼しましたm(_ _)m (2021年7月5日 16時) (レス) id: 6216055e94 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ストーリーがめちゃくちゃ面白くて引き込まれました…！神作品を作っていただきありがとうございます！！ (2021年6月27日 20時) (レス) id: 40eb1cfd02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haiiro | 作成日時：2021年1月23日 20時
