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お参りを済ませ、やっと人の少ない場所に出る。あれだけ揉みくちゃにされたのに意外と着物が乱れていない
髪の毛は少しだけ崩れてしまっていて残念だ
「俺が結直してあげるよ、こっちにおいで」
「え?できるの?」
「妹のをよくやってあげるからね」
精市くんは優しく微笑んで、人の比較的少ない境内の裏の段差にハンカチを引き私を座らせる
そして髪の毛を梳かしてもう1度くるくると器用に纏めてくれた
「ありがとう、精市くん」
「これぐらいお安い御用」
さあ行こうか。と手を差し伸べる精市くんの手に手を伸ばした時、また携帯が震えた
精市くんに断って、電話に出る
『ごめんね何度も、不二だけど』
「ううん、どうしたの?」
『…やっぱり、君に会いたくて。今どこにいるかな』
「え?今は…」
境内の裏だと答えようとして少しだけ考える。いくら幼馴染とはいえこんな場所で二人でいたら不二くんはどう思うだろう
今更ながらなんだか申し訳なくなる
「A、どうかしたかい?」
『…A?』
なんだかややこしいことになった気がすると、不二くんの聞いたこともない重低音に体が震える
きょとんとした顔の精市くんにしーっと人差し指で合図するが知ってか知らずかどこか赤也くんをいじめる時の意地悪な顔で微笑むので背中が寒くなるのを感じた
『誰と一緒にいるの?今の男の声だよね?』
「幼馴染の精市くんだよ」
『部員の人は?』
「皆バラバラに散らばっちゃったらしくて」
「誰から電話?俺よりも大事な用なの?」
「精市くんは黙って!!ややこしくなるでしょ!!」
完全に魔王降臨の顔をしている。そして不機嫌な不二くんの声にビビる。
『精市くん、ね………随分仲がいいんだね』
「幼馴染だからね」
『…Aちゃんは幸村といた方が楽しそうだ』
「そんなことない!!」
どうしてそんなことを言うんだろうか。大声を出した私に驚いた顔をして精市くんがオロオロとし始める
頬が濡れる感覚がして初めて自分が泣いているのだと気がつく
「…もう、いい。もういいよ」
『Aちゃん?泣いてるの…?』
「…私がクリスマスの日も、どんな気持ちで何も言わなかったのかも知らないのに、勝手なこと言わないでよ」
『え?』
「しばらく声聞きたくない、不二くんの馬鹿」
続きの言葉を待たずに電話を切る。そして携帯をカバンに突っ込んで心配そうな精市くんの手を引っ張ってその場から離れた
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HarukiTakuya070(プロフ) - はじめまして、俺だけを見ての不二先輩のリョーマの呼び方ですが『越前』呼び捨てだと思います。 (2018年5月4日 5時) (レス) id: 53d7f5d75e (このIDを非表示/違反報告)
しろみや(プロフ) - 梅田さん» ご期待に添えたようで良かったです!話はもちろんですが主人公も褒めていただけて喜んでいると思います!こちらこそリクエストありがとうございました! (2018年2月18日 23時) (レス) id: e7d70fed0d (このIDを非表示/違反報告)
梅田(プロフ) - しろみやさん» 早速読ませていただきました。このお話に限らずですが、しろみやさんの書かれるヒロインちゃんがとても可愛らしくて素敵でした。書いてくださってありがとうございました! (2018年2月18日 22時) (レス) id: e6673e6f1b (このIDを非表示/違反報告)
しろみや(プロフ) - 梅田さん» 続編の方でリクエストのお話更新しておきましたのでお暇な時にぜひ読んでください (2018年2月18日 21時) (レス) id: e7d70fed0d (このIDを非表示/違反報告)
しろみや(プロフ) - 梅田さん» 長編も読んでくださってありがとうございます!宍戸さんは初挑戦ですが頑張りますね!リクエストありがとうございます! (2018年2月18日 19時) (レス) id: e7d70fed0d (このIDを非表示/違反報告)
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