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口付けた不二くんがゆっくりとまぶたを持ち上げ、上目遣いに私を見つめ妖しく微笑む
そしてまた何事もなかったかのようにもう片方の足に靴を履かせ、私の学生鞄を持ってくれた
「帰る前に少しだけAちゃんに言いたいことがあるんだ」
「言いたいこと?」
場所を変えようか、と不二くんが私の手を取り歩く。硬直する私に「また倒れないようにね」と微笑んで不二くんは私を校庭の桜の木の下へ私を連れ出した
荷物を汚れない場所に置いて、不二くんが私に向き直る
さらさらとした紅茶色の髪に桜の木の影が落ちて薄ピンクのベールをかぶっているみたいに綺麗だ。まるで別世界の人みたいで私は思わず見とれてしまった
「Aちゃん」
「は、はい」
「…きみは、誰か付き合っている人はいるかな」
「え?いない、けど」
好きな人はいる。そう言いかけて口ごもる
まさかその人物が貴方です、なんて言えないし。私が言いよどんでいると不二くんが目を細め私を見つめる
「君の好きな人はテニス部にいる?」
「え、あ、う」
「ふふ、図星かな」
不二くんは微笑みながら一歩二歩と私に近づき、そっと手を伸ばし私の頬を撫でた
私はただ硬直しその意味を必死に考える
「その好きな人はだれ?」
「ひ、」
見上げれば目が合った。妖艶で、綺麗で、思わず悲鳴が出そうになるほどの綺麗な人。でもどこか意地悪で胸が燻るのを感じる
私の口が意志とは関係無しに動く、動かされる
「わたし、は。不二くんのことが」
「…うん」
好き、とそれだけなのに口が震えて言葉にならない
不二くんが優しく私を見つめながらそっと顔を寄せる。額を合わせ、すり、と頬を寄せる
心臓が爆発しそうなくらいなのにどうしてか泣きたくなる。愛おしすぎてなのか、どうしてなのか、感情がコントロールできない
「泣かないで、Aちゃん」
近くで見れば見るほど吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳。この人はなんて美しい人なんだろうか
「不二くん、」
「うん…」
「ずっと、好きだった」
「過去形?」
「ずっと、好き」
私の言葉に不二くんの頬が微かに色づき、綺麗な瞳が揺れる。濡れた私の頬を優しく拭って、何も言わずに唇を重ねてくれる
暖かくて柔らかくて、また涙がこぼれそうだった
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HarukiTakuya070(プロフ) - はじめまして、俺だけを見ての不二先輩のリョーマの呼び方ですが『越前』呼び捨てだと思います。 (2018年5月4日 5時) (レス) id: 53d7f5d75e (このIDを非表示/違反報告)
しろみや(プロフ) - 梅田さん» ご期待に添えたようで良かったです!話はもちろんですが主人公も褒めていただけて喜んでいると思います!こちらこそリクエストありがとうございました! (2018年2月18日 23時) (レス) id: e7d70fed0d (このIDを非表示/違反報告)
梅田(プロフ) - しろみやさん» 早速読ませていただきました。このお話に限らずですが、しろみやさんの書かれるヒロインちゃんがとても可愛らしくて素敵でした。書いてくださってありがとうございました! (2018年2月18日 22時) (レス) id: e6673e6f1b (このIDを非表示/違反報告)
しろみや(プロフ) - 梅田さん» 続編の方でリクエストのお話更新しておきましたのでお暇な時にぜひ読んでください (2018年2月18日 21時) (レス) id: e7d70fed0d (このIDを非表示/違反報告)
しろみや(プロフ) - 梅田さん» 長編も読んでくださってありがとうございます!宍戸さんは初挑戦ですが頑張りますね!リクエストありがとうございます! (2018年2月18日 19時) (レス) id: e7d70fed0d (このIDを非表示/違反報告)
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