「本物」 ページ11
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【監督side】
本物の役者というのは、時に現場に奇跡をもたらす時がある。
まさに、この瞬間がそうだ。
先日NGを出していた子とは思えない。
この場にいるとよく分かる。
スタッフ全員が、役者の集中力に吸い込まれていく。
芝居に魅せられていく。
そのシーンの雰囲気が壊れてしまわないように、役者の集中力が切れないように、スタッフ全員が細心の注意を払う。そうさせてしまうほどの圧倒的な演技力。
そういう空気になると、「奇跡」というものが起きる。
本当に今までで、2回ほどだろうか、監督という仕事を30年やって来て、たったの2回だけ。その場に居合わせた事がある。
そして今も。
原作の漫画通り、土砂降りの中で白川華と朝日春の気持ちが交差する場面。
誤解が解けて、お互いが好きだと分かると、天気が晴れる。
しかし、実際の天気はそうはいかない。だから、途中まで撮って、雨が止んだら最後のシーンを撮るつもりだった。
カットをかけようとした時、嘘みたいに雨がぴたりと止んだ。
俺は演助に目配せをして、止めずにそのまま撮る事にした。
スタッフも、演者も、集中しているから、「なぜ止まらないんだ」というよりも「このまま全て出し切る」という空気が漂う。
こんな奇跡は二度とない。
こんなチャンスを逃せない。
最後まで撮り、カットが掛かると、スタッフから拍手が起こる。スタイリストとマネージャーがびしょ濡れの演者二人にダウンを着せに行く。
映像を確認しに二人がモニターに集まる。
鈴鹿「あぁ、ここで雨止んだんだ、」
『気が付かなかった、』
鈴鹿「え、見て、虹が、！」
最後の抜けのシーン。
二人の間に虹がはっきりと写っている。
とんでもない子を、俺は世に出したかもしれない。
ジャニーズに女の子が入ったと言うニュースを聞く前に、業界ではその噂が立っていた。
何を考えているんだと思った。そんなのことをしたところで、どこの現場も使いたがらないし、日の目を見るのが遠のくだけだ。
その子はその才能と共に世間に潰されて終わってしまうぞ、と。
そう思っていたのに、資料映像が送られて来た時、その子の芝居からその子から、目が離せなかった。
一瞬で持って行かれた。
後から誰かに何か言われても構わない。
この子は、椎名Aは、
絶対に世に出さなければいけない。
この子は本物だ。
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スヒョン(プロフ) - ゆみーるさん» ゆみーるさん、ありがとうございます！更新頑張ります！ (4月23日 3時) (
レス) @page49 id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみーる - 続き楽しみにしてます! (4月20日 23時) (レス) @page46 id: 9521a509ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スヒョン
| 作成日時：2024年3月7日 0時
