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『うそ、、そんな、、どうして、、』
知詠「来るよ」
知詠の声と同時に、嗎と蹄の音が遠くから響く。人の声も響く。こっちに向かって来ているみたいだった。
『来るって、何が、』
知詠「見れば分かる」
その姿が見えると、背筋が凍った。
十、いやそれ以上の男達が見覚えのある装束を着ている。全員同じ、青白い肌に釣り上がった目つき、長く伸びた髪を後ろで結っている。
こんな惨事なのに、人々を助けようともせず、真っ直ぐこっちに向かって来る。
そして掲げた旗にはあの家紋があった。
『っ安倍家、』
彼らは私たちの目の前まで来ると手綱を引いて止まる。
向こうからは見えていないことが分かっていても、地面に倒れている知詠を庇うように座る。
「どこのだ」
「こいつは、、あぁ、あれですよ、佐久間家の」
「桜のところか」
「放っておいても、そのうち死ぬのでは?」
「駄目だ。あいつらに関わりのある者は全て処分しろとの命令だ」
「、、かしこまりました」
一人、男が馬から降りて、ゆっくりと歩いて来る。
手には長物。槍だ。
『待って、今佐久間って、。処分て、まさか、』
頭が追いつかないまま、男が槍を振り上げる。
『辞めて!!』
わたしの声と同時に、男のやりが弾かれ飛ばされて長屋の屋根の上に転がっていった。
男の手にはクナイが刺さっていて、後ろからまた別の足跡が聞こえて来る。
振り返ると、大介さんと阿部さんが物凄い速さで走って来て、一瞬で男達を倒してしまう。
佐久間「知詠!!」
大介さんが知詠に駆け寄って抱き寄せた。
でも、、もう、ぴくりとも動かない。
『そんな、、』
佐久間「亮平!!」
大介さんは縋るように阿部さんを見るけど、阿部さんは目を瞑って首を横に振った。
佐久間「そんなっ、嫌だ、知詠、、頼むよ、なぁ、目ぇ開けて、、。俺っ、お前の為にっ、、。」
ぐったりした知詠を強く抱き寄せながら、大介さんは苦しそうに泣いていた。
知詠「まだ、息がある。」
わたしの後ろに立っている知詠が言う。
知詠「ここでAの力は使えないから、ほら、この子達の力を使うんだよ」
大介さんと阿部さんの影には妖の影がちらついていた。二股に分かれた尻尾が見える。
『、、マタタビ?』
知詠「そう。この時代の霊力を借りて、わたしに少しだけ、時間を、。」
『時間、?』
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作者名:スヒョン | 作成日時:2024年3月2日 22時