朧の都に棲む妖-4- (ページ5)

今日:189 hit、昨日:1,578 hit、合計:72,739 hit

. ページ5

ー

鈴の音を無視して大介さん達の後を着いて行こうとすると、さらに強く鈴の音が鳴る。

その場に立ち止まって辺りを見回すけれど、音がなりそうな物はないし、やっぱり私しか聞こえていなくて、大介さん達はどんどん先に進んでいってしまう。

なんだか、呼ばれている気さえする。

『一体、何の音、、？』

音は広間と反対側の廊下の奥から聞こえてくる。

もしかしたら、この違和感の正体がわかるかもしれない。そう思って、大介さん達と反対方向に歩き出した。

湯殿を通り過ぎて、まっすぐ進むと、古そうな勝手口の前に着く。でも、

『鍵、、』

南京錠が金具に引っ掛けられてはいるものの、施錠はされていない。誰かが開けたんだろうか、。

窪みに手をかけて、戸を開けようとした、その時、幼い女の子の啜り泣く声が聞こえてくる。
扉の向こう側からだ。

『誰かいるの？』

声をかけても、向こうからは何も返ってこない。
ただ、泣く声だけが聞こえてくるだけだった。

こんな部屋があること自体初めて知ったし、雪乃屋にきてから男性しか見たことなかったのに、幼い女の子がいたなんて、、。

『待っててね、人を呼んでくるから、』

もしかしたら迷い込んでしまったのかもしれないけど、この家の特別な事情を考えると、誰かに知らせたほうがよさそうだった。

『すぐに戻って来るからね、』

そう言って、振り返るけれど、

『え、』

来たはずの廊下は暗闇に飲み込まれたように無くなっていた。もう戻れない。

『何がどうなってるの、？』

こうなればこの戸を開けてみるしかないのだけれど、、。

また戸に向き直ると、向こう側から微かな光が漏れているのに気が付いた。

『灯り？火？、、なんだろう、』

「助けて、」

さっきまで泣いていた女の子の声が、今度ははっきり聞こえる。

「助けて、お願い、、助けてっ、」

『そこにいるの、？』

「助けて、、怖い、、」

閉じ込められていた時の自分を、その声に重ねてしまった。この状況、どう考えてもおかしいけれど、誰も頼れないなら、いくしかない。

霊力も少しは戻った訳だし、、。

再び窪みに手をかけて、戸を開いた、その瞬間、足元から建物が崩れていくように、自分の体が宙に浮く。

『きゃあっ！』

落ちる感覚は全くない。浮いたまま、目の前の勝手戸が一人でにゆっくりと開く。