朧の都に棲む妖-4- (ページ22)

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深澤「黙れ。お前の下手な芝居観に来たんじゃねえんだよ。」

渡辺「街の関係ない人達まで巻き込みやがって」

梁明「街をあんな風にしたのは、君達でしょう。妖を従えて戻ってくるなんて、何を考えて居るんですか？」

阿部「そんな見え透いた嘘を並べて俺達と問答しにここにきたのか？」

梁明「いいえ。」

梁明は面を被ったように釣り上がった口を、更に深く引き上げた。その顔は、妖よりも、なによりも、恐ろしく、歪で、狂気と殺気が滲み出て居る。

梁明「今更あなた方に会っても仕方がない。

　わたしはね、彼女に会いにきたんです。」

身体は深澤さん達を向いたまま、その恐ろしい能面の様な顔がこちらを向いたかと思うと、その目が、わたしを捉えた。

『ひっ、、』

声にならない悲鳴の様な声が喉から漏れ出た。

梁明「見つけた。神子。」

身体がガタガタと震え出す。こんなに淀んでいて憎悪に満ちた霊力は感じたことがない。
地面に押さえつけられる様な重たさと、心臓を掴まれて居る様な息苦しさが襲う。

知詠「Aっ！！逃げて！！！」

知詠が押し込む様にわたしを森の奥へ誘導する。
知詠の声は叫び声にも聞こえるほど、怯えていた。
わたしはされるがままに、知詠と森の奥へと逃げ込む。

何が起きているのか、見当もつかない。知詠もわたしも冷静にこの状況を見極められない。そんな余裕を少しも持たないほど、あの一瞬で、体も思考も恐怖に支配された。

木の根に足を取られながらも、上がる息と共に痛む肺を着物の上から抑えながら暗い森の中をひたすら走る。

知詠はわたしの手を取ろうとした。でも、わたしの手をすり抜けて、重心を崩したのか、倒れる様に地面に座り込んだ。

『っ知詠！』

抱き上げようと、知詠に駆け寄り今度はわたしが手を取ろうとするけど、やっぱり、身体をすり抜けてしまう。
知詠の体は、向こうが透けて見えるほど、消えかけていた。

知詠「Aっ、逃げて、」

『駄目っ、置いていけない！』

知詠「知詠のことはいいの！！逃げて！！」

『でもっ、』

知詠「っ、、ごめんなさい、。多分、全部、わたしのせい、。わたし、、梁明に騙されてたんだ、、。」

『えっ、、』

知詠「ごめんなさいっ、わたしのせいで、、」

『、、知詠、』

座り込んだまま動かない知詠の顔を覗き込もうとすると、逃げて来た方向から、また錫杖の音が響く。