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森の中の獣道を足早に進んでいく背中を、知詠と必死に追いかける。森の中には木の根元に小さな祠が建ち並んでいて、紙垂や鳥居も転々としている。
あちらこちらから、混沌とした霊力を感じて、足がすくみそうになってしまう。
『西の森に、何があるの?』
知詠「あれだよ」
知詠が指を指したところには、大きな岩がいくつも積み重なってできた洞窟のような穴があった。周りの霊力がその穴の中へ吸い寄せられているように、深澤さん達が連れてきた人たちは次々とその中へ入って行く。
知詠「朧へ繋いであるの。あの歪みを通れば、朧へ行ける。」
『こんなところに、こんなものがあったなんて、、』
知詠「誰が作ったと思う?」
言い方からして、意外な人なんだろうと想像がつく。でも、わたしはこの時、まだ生まれてもいないし、この歪みもこの時代よりかなり前に作られたように見える。
知詠「誰もが知ってる人だよ。陰陽師がここまで力を持つ原因になった人。」
『、、、安倍、、晴明?』
知詠「そう」
『でも、なんで、?』
知詠「A、今まで読んだ書物の中に、安倍家の歴史に関するものはあった?」
『、、えぇ、あった。けど、それがなに?』
知詠「安倍晴明の死因は?」
『、、不明、だったはず。たしか83歳で亡くなったって。老衰だろうって書かれてたと思うけど、』
知詠「老衰ね。83歳、確かに長生きした方だけれど、不明っていうのがおかしいのよ。」
『おかしいって、どういうこと、?』
知詠「国のお上同等の権力者、しかも神の力を持ったと言われ、国の守護神として敬われてきた人間が亡くなったら、国の人々は動揺する。でも、当時そうならなかった。」
頭の中での記憶を辿る。父上から渡される書物の中に、確か安倍晴明の事が事細かく書かれていた巻物があったはず。
そう、たしか、安倍晴明が亡くなる少し前から、妖が人を襲うようになり、晴明の力が弱くなっているからだと、国中から不満が溢れていた。だから、晴明の息子である安倍泰親(やすちか)が仙籍の地位になった。泰親はまだ当時7歳ほどだったはず。
妖の問題はすぐに解決へ向かい、人々の不満が解消すると、その数日後に晴明は息を引き取ったという。
死因については何も書かれていなかったけど、確かに変だ。
知詠「晴明は、安倍家の人間に殺された。」
『、え、』
頭によぎった予想を知詠は声に出して言った。
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作者名:スヒョン | 作成日時:2024年3月2日 22時